「シュウ、これはいったいどういうことなの? ちゃんと納得できるように説明してよ ね」
グミは皮肉にも俺がヴェルヴィスに言ったセリフを、丸々返してくる。
もちろん納得のできる説明なんてできるはずがない。帰る途中で目が覚めて、そのまま居心地がよかったし歩くのが面倒だったなんていったら……いつぞやのチ ンピラのボスみたいな目に遭いかねない。なんとかいい言い訳を考えねば…。
「えっと、その……だから、要するに、そのー」
やばい、全然何も思いつかない。しかもいつの間にか頭かいてたし。
グミもユアもじーっとこっちを見てる。
「早く答えなさいよ」
グミの発言もいつになく冷めている。どうする…どうすればこの現状を打破できるんだ!?
……………何も思いつかん!!!! だがラッキーなことに、予想外のやつから救いの手が差し伸べられた。
「よっ、シュウ。お前、ちょびっと出世したなあ。元気だったか?」
サイン兄。俺が小さいときから、既に兄さんって感じで何から何までできた。成績優秀、頭脳明晰……多分俺と二つ三つしか離れてないのに、もうPT屋に勤め てるなんてすごい出世振りだ。
昔はいろいろつるんでやんちゃしたが、今ではもう完全に大人って感じ。とにかく、せっかく出た助け舟に乗らないわけには行かない。
「おお、兄貴! そっちこそ知らないうち出世したなぁ! あの立派なリーゼントも、いつのまにかいかした頭に…」
「いや、昔からこれだから。というかリーゼントなはずないだろ」
「あれ、そだったっけか。ま、たいしてかわんねえだろ。ア ニ キ」
もうちょい、もうちょいだ…。
「え、このサインって人がシュウのお兄さんなの?」
!? なんでそうなる! でもここで否定しておくとまずいか…。
「実は…」
「こんなやつのアニキなわけないだろ。こいつは孤児だからな」
ちょっとは空気呼んでくれよ義理の兄貴…。でも、何とか話の方向は変わったみたいだ。
「まぁ義理のな。血はつながってないんだよ」
「う〜ん…」
グミは、よくわかってないようだったが、別にわからなくてもいいのでそのまま流すことにした。
少しでも話の矛先を遠ざける。180度遠ざける。
「それより、PT屋でなんかやることあったんじゃないのか?」
「あっ!」
グミがすごい気づいた顔をする。OK、もう安心だ。グミが目を輝かせて……いや、俺を見てる!?
「シュウ、あんた…指名手配されたのよ。ユアさんもだけど…ほら、この手配書見てよ」
グミに渡された紙を見る。そこには、かなりの馬鹿面をした俺の白黒写真と、懸賞金が……5k!?
というか、本当に指名手配されてるとか……どんな容疑だよ。なになに……
[盗聴、不法侵入容疑 5k]
…………。俺、しょぼいな…。どれ、ユアのも見てみるか。
[不法侵入、第一級傷害容疑 200k]
大ショック……。40倍とか、もう立ち直れないかもしれない。
「シュウ、指名手配されてショックかもしれないけど、多分この町にいる限り、つかまることはないから安心して」
いや、その心配はしてないんだけど……。
「ああ、よかった。とりあえずさっさとPTの登録済ませようぜ。ユアも退屈そうだし」
「いや、わたしのことなら気にしなくていいですよ」
「それより、なんでシュウがPT屋来たこと知ってるの?」
微妙に墓穴掘ったがこの程度ならごまかせる。
「サイン兄といったら、PT屋だからな」
「へぇ〜」
「いや、この間任されたばっかりだが」
おいいいい!!
「……シュウ、泊まるとこ決まったら話あるから。とりあえずユアさん登録しよう」
アアアアアアアアアアアア……………。終わった…。今のうちに遺書かいとこうか。生きていくのが嫌になりました…っと。
悲しいことに俺の苦悩はあっさりと無視され、ユアは既に登録作業に移っていた。
「ふむふむ。ユア、8歳、戦士…ん? 8歳って新手のジョークか!?」
サインがあまりの驚きに、変な声を出す。え、8歳?
「数え年なんで…」
「なるほろ。じゃあ登録料は負けとくわ。それより君らPT組んでたのか?」
どうしてああもあっさり納得するのかわからない。ユアはどうみても18〜20くらいの妙齢なんだが。
なぜかユアにかわってグミが説明する。
「えっと、私とシュウがPTで、それにユアさんが加わる形です」
「じゃあ3人になるわけだな」
俺がとっさに答える。
「そういうことになるな」
サインは嬉しそうに微笑む。
「3人以上になるとギルドが結成できるって知ってたか?」
続く
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