ペリオン、指名手配、懸賞金、襲われた金持ち……よみがえる血だまりの中の光景。
これらのことが頭の中でぐるぐるまわってる。否定したい…でも目の前の箱が真実を物語ってる。
「えー、その金持ちが提示した手配書ですが、各PT屋に届いてるらしいです。でもまぁこの番組じゃカニングにしか伝わりませんけどね。まぁ、サイン…見て たら貼っとけよ!」
……すっごい私信に使ってるんだけど…。私が不思議な箱…店長のサインさんいわく、テレビというらしい…に夢中になっているうちに、店長は店のポストか ら、三枚の紙切れを取り出してきた。
きっとその真新しい紙には、大変なことが書いてあるんだろう。店長さんに勘付かれるまでに、逃げ出さなくちゃ!
「ユアさん、逃げよう! あれが見られたら私たち……!」
私は、店主がそこにいるのも気にせずに、ユアさんに叫ぶ。でも、ユアさんは微動だにせず、一言だけ言った。
「もう…遅いみたいです」
遅すぎた。店長は店の扉を閉めきって、薄暗い部屋をさらに暗くする。そして、手にした紙をまじまじと見つめる。店唯一の出口の前には店長、後ろは壁。どう 見ても逃げ切れる状況じゃない。
「えーっと……暗くてよく見えないな。メガネメガネ…」
店長は独り言を言うと、手探りでめがねを探しはじめた。どうやらメガネがないとよく見えないらしい!
店長が見つける前に、叩き壊しちゃえば……
「えーっと、そこの少女。その辺に俺のメガネないか? 取って欲しいんだが」
私は探し始める前に、とっさの嘘をつく。
「こ…ここにはないみたいです!」
「あっそう…どこやったっけなあ」
嘘がばれないうちに探さなきゃ! まずはカウンター……ゴミみたいのがいっぱいあるけど、メガネなんてどこにもない。テーブルの上も、テレビの上も…よく わかんない本棚にもない。ん、あれ……ないならいいんじゃん。これで読めないんだし。そう思うと一気に安心した。…
「あの見つからないなら、先にPTの登録を……」
「あっ、思い出した!」
えええええ!!? 店長は、おもむろに頭のバンダナを外す。そこには頭がよく見えそうなおしゃれメガネがあった。度が入ってなさそうだけど、きっとアレで 見えるんだろうな。あーどうしよう……絶体絶命!
「えーなになに……超凶暴狼女ユア。懸賞金200k…へぇ……美人だなあ、この人。こんな人に200kもかよ。強いんだろうかねぇ…」
…気づいてない? これもしかしていけるかも……!! だけども、店長の目が二枚目の手配書に移った瞬間、その希望は粉々に崩れ去る。
「えっと、二枚目は……ってこいつ、シュウじゃん!」
もう…だめだ。終わりだ…。このまま、あの店長さんに捕まって…シュウもユアさんも牢屋に入れられるか、もしかしたら…もっと大変なことに…。そんなの、 そんなのって…ないよ。せっかく仲良くなれたのに……。
目頭が熱くなる。嫌なことばかりが頭によぎる。店長がこっちを見て、言う。
「どうやら、お前さん…そっちの髪が白い方は指名手配されてるみたいだぞ。なにやったんだ?」
「あの、お願いします! シュウとユアさんを連れてかないでください!!」
私は店長の足に抱きついて、哀願する。だけど、店長は不思議そうな顔をして言った。
「はぁ? 何言ってるんだよ? シュウの懸賞金5k。出世したと思ったら、まだまだしょぼいな。そこの姉さんの方が、見た目も懸賞金もずっといい! 大 体、この盗賊街のやつらなんて懸賞金がかかったやつばっかだしな。捕まえる気とかはっきりいってないよ。シュウ突き出したら俺も捕まるし。…つか、なんで シュウのこと知ってんだよ」
どういうことか全然話がわからないんだけど……。とにかく店長さんは二人をどうにかしたりしないってこと? まだ状況の理解できない私に代わって、ユアさ んが質問する。
「あの、サインさんの賞金はいくらなんですか?」
店長は、楽しくなさそうに言う。
「300kだよ。どっかの家爆破したらかけられた。本当に金持ちってやつは金で何でもやろうとしやがって…。まぁとにかく、こんな指名手配で動くやつはこ の町にいねえよ。あー今思い出してもむかつくわ」
「なんかよくわかんないけど、よかったぁ…」
私とユアさんは手を組んでよかったよかったと言い合う。そして、そのときどさっと何か重いものが落ちる音がする。
「痛っ! あっ、やべ…」
ってシュウ!?
続く
第9章11 ぐみ5に戻る