「…今日はやけに早いな。グミすらもこんな時間に起きてるとは…」
「おはよ、れふぇる…」「おはようございます」
明らかに眠そうな声でグミが、礼儀正しく…軽く礼までしてユアが返事をする。シュウは我のことを一瞬にらんだが、何も言わず銃の手入れに戻った。
どこかいつもと違う感じがした。我が目を覚ました頃と目を閉じる前の様子とでは、微妙にどこかが異なっていた。例えば…シュウの顔とか、我のいた位置とか な。まぁさほど気にする必要もあるまい。
「ねぇ、みんな。今から恒例の第三回PT会議を始めますよ」
グミがいきなり大きな声で皆…恐らく我を含む4人で会議をするようだ。シュウが明らかに不満の異議を上げる。
「なぁ、せめて飯食ってからにしようぜ。腹が減ってはなんとやらっていうだろ?」
「シュウ、意見は手を上げていってよ。ちなみに今の意見は却下。せっかく早く起きて時間があるんだから、今のうちにぱっと決めよう」
シュウの言う事も一理あったのだがグミは全く聞く耳持たずだった。…我には関係ないことだが。グミの顔を見て、シュウもしぶしぶ首肯する。
「じゃあ今日の議題だけど…。これからどうするかです。意見のある人いますかー?」
…………もっと別の言い方は出来ないのだろうか。確かにわかりやすくていいかもしれないが…。初めにシュウの手が上がる。
「シュウ…何か用?」
「何か用? はないだろ。意見があるんだよ、意見が!」
「くだらないことだったらユアさんも一緒に怒るよ」
そこで何故ユアの名前が出てくるのかわからないが、その発言はシュウをかなりビビらせたようだった。あんなことがあったから、しょうがないといえばしょう がないが……今のユアをみると全く怒ったりはしないように見える。実際のところは誰も知らないが。意を決したのかシュウが固い口調で答える。
「とりあえず…俺のレベルが30になった。だからカニングの転職場に行くのが最優先だと思う」
「ふむ…。そうだね、じゃあ朝ごはん食べたら行こっか」
グミはまるで遠足にでも行くかのように言う。シュウはと言うと、少しほっとしているように見えた。
「ユアさんは、何か言いたいことある? 私たちへの質問でもいいよー」
グミは突然、黙って話を聞いていたユアに話を振る。今日のグミの行動は読めない。ユアは少し戸惑いながら…言った。
「お二人に2つ聞きたいことがあるんですけど…。いいですか?」
「いいよー」「ああ」
2人ともあっさりと承諾する。ユアは一発目からアレな質問をした。
「えっと…グミさんとシュウ君はどういう風に出会ったんですか? それともお兄さんと妹さん?」
例の二人のうちグミだけが、かなり慌てながら兄弟云々を否定する。
「わ…わわわたしたちは、その兄弟なんかじゃなくて…ほらその、私がか弱いからシュウにボディーガードやってもらってるの! ほら、髪の色も違うし全然似 てないでしょ? 絶対兄弟なんかじゃないからね!」
が、シュウのほうは落ち着いていて語りに入りだした。
「そう…あれは木枯らしの吹く、寒い夜だったな。俺が夜道を当てもなく歩いていると、盗賊風情が女の子を一人囲んで、なんかしてたんだ。俺はそのまま見送 ることも出来たが、正義感あふれる俺には、女の子を一人置いてその場を去るなんてことはとても出来なかったんだ。だから俺は、腕っ節にモノを言わせてチン ピラどもをけちょんけちょんにしてやった。そこで、俺とグミは運命の出会いを……ってうわ、なにをやってるんだ。よせ!」
我の体が、強い力で持ち上げられる。
「もんどうむよう! あることないこと勝手に話作るなー!」
信じられないことに、我は真っ赤になったグミの怒号とともに、逃げようとするシュウへとぶん投げられた。
「ぐがっ!」
シュウの悲鳴とガゴンといういい音がして我の本体とシュウの額がぶつかり、火花を散らす。我には何のダメージもないがシュウの額は割れて、血が出た。それ 以前に複数の機能を持ち、さらにアドバイスまでしてくれる我が、ノリツッコミの道具にされるのはどうにかならないのだろうか。グミはシュウが気絶したのを 見て、ようやく平静を取り戻す。
「えっと…あいつはただのボディーガードだから、ユアさんも好きなように使っていいからね。さっきのことは気にしないでね」
ユアは、目を回しているシュウを気の毒そうに眺めてから、
「はい」
と一言だけ答えた。本当にシュウが気の毒だ。グミが話を戻す。
「えっと、それで二つ目の質問ってなに?」
「あの、コレは答えたくなかったら答えてくれなくてもいいんですけど…」
「うん」
「二人とも何のために仲間を集めて旅をしてるんですか?」
それを聞いて、グミがすごい気づいた顔をする。目的を忘れてたんじゃないんだろうな。作者も。
「私は……私のパパとママを殺したドラゴンを探してるの。絶対…絶対に許さない」
どうやらしっかり覚えていたようだ。グミは胸元に光るクロスのチョーカーを握り締めて、胸の奥から絞り出すような声で言った。我もよくは知らないが、つら いことを思いだしているのだろう…声が震えていた。
それを聞いたユアは、右手を握り締めて力強く答えた。
「お母さんやお父さんを殺すなんて許せない……。わたしもきっと力になれるように頑張ります!」
「うん。ありがと!」
グミはにっこりと微笑み、右手をユアの前に差し出した。ユアはそれを見て、しっかりその手と握手する。熱い友情がここに………と思ったが、ぐぅ〜という情 けない音に全てかき消された。すぐに顔に出るからグミのものに違いない。グミは握った手を離して、強引に話を戻した。
「よし、お腹も減ってきたし、これで会議は終了かな?」
「シュウくんが寝てるけど……わたしは他に意見はないです」
いつの間にか寝てることになったシュウが不憫でならないが、それよりも我の意見を聞かずに会議を終わろうとはなに事だ。もう一つ大事なことがあるだろう。 我は会議が勝手に終わる前に言った。
「ユアが仲間に加わったのにPT屋にいかなくてもよいのか?」
「あ…」
続く
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