猿とドレイクの連合軍VSシュウ、コウ、グミの三人の戦争(?)、グミの復帰から更に激 しさを増していった。
コウは自らの体力を削りながらもスラッシュブラストを連発し、その剣戟と衝撃波で、既に数十匹の猿をあの世に送っていた。しかし、コウは敵の中に突っ込ん で暴れているためか、消耗が激しく、回復薬をがぶ飲みしながら戦っている。
「おおおお〜〜!!! スラッシュブラスト!!!」
コウは渾身の力を振り絞り、スラッシュブラストを放つが体力の消耗からか、最初ほどの威力はなく、何を逃れた猿たちによってバナナの一斉射撃を受ける。コ ウは剣でバナナを払おうとするが、四方八方から降り注ぐバナナの雨を避けきることは出来ない。
(ぐっ…このままだとまずい…。あの技を使うしかないのか。)
「…!」
コウの頭部にバナナが直撃し、コウは喀血し、うずくまる。
(ダメージと疲労で意識が朦朧と…。僕はここで終わるのか…)
コウが諦めかけたそのとき、
「キキキッ!!」
突然一匹の猿が悲鳴を上げて吹き飛んでいく。何が起きた理解出来なかった猿は、仲間を倒した何かに向き直るが、その直後頭蓋骨を叩き割られ、生命を立たれ る。1匹…また1匹と猿が吹き飛んでいく様は少しおかしくもあった。
まぁそれをやったのは小さな竜巻と化した我とグミだが。
 仲間を倒され逆上した猿は飛んで火にいる夏の虫のごとく、グミの竜巻に飛び込んでいく。…まぁ鎖にミンチにされるか、鉄球に触れた瞬間吹き飛ばされ消失 する。
「こここ…コウさん! 今からこいつら倒すから…」
グミは回転しながらもコウに声をかける。しかし、意識が朦朧としているコウには竜巻が喋っているか、または聞こえていないかもしれない。そのときだった。
「ウキッ!」
一匹の猿が跳躍しグミの頭上…この技の唯一の死角(?)から襲い掛かってくる。もしもこの攻撃を食らったりしたら、グミは我を手離してしまうかもしれな い。
「回転を止めろ!!! 上から来てるぞっ!」
グミは両足に力を込め、止まろうとするが、先ほどよりは勢いが落ちたとはいえども、グミにはまだきつかったらしく、尻餅をついてしまう。何とか止まること は出来たが、これだとさっきよりピンチではないか!
「グミさん!!」
何とか起き上がったコウは、大剣を投擲して猿の攻撃を防ごうとするが、ダメージが大きく剣を持ち上げること自体がつらそうだ…。到底間に合いっこない。
「グミ、マジックシールドを!」
「ふにゃふにゃ〜〜」
グミの表情と発言(?)は気絶とまでは行かないが、精神を集中してたてを作り出すマジックシールドなど使えないということを、何より明確に物語ってい た。…我のスキルで守れないこともないが、持ち主であるグミがこれでは…。これは食らうな…
「ぱんぱんぱんぱんぱんひゅー」
5つの銃声と風斬り音。それと同時に猿の四肢…右腕、右足、左足、左腕、と順に血飛沫が上がり、第5弾と最後に放った青い光線がそれぞれ頭と心臓をほぼ同 時に撃ち抜いた。脅威の早業…こんな芸当が出来るヤツを我は2人しか知らない。猿を惨殺した当人は、銃口から立ち上る硝煙を吹きながら、
「ふぅー。自分でも惚れ惚れするぐらいの腕だな。名づけて『五傍星』。…グミ、大丈夫かー? ついでに茶髪の兄さん大丈夫か?」
…このあからさまに自画自賛しながら現れたアンテナ男、シュウはまずグミを助け起こす。
「う〜ん…頭がくらくらする〜。ん、シュウ何やってるの?」
「何ってグミがピンチだから飛んできたんだよ」
「あぁそうなの? ありがと。それよりコウさんの怪我!!」
グミは実にそっけなくシュウに礼を言ったあと、すぐにコウの怪我を治すために走って行ってしまった。頑張ったシュウはあまりに不憫だが、グミの優先順位は 怪我したコウなのだから仕方ない。
グミは両手に精神を集中して、コウに手をかざす。
「ヒール!」
コウのからだが緑色の淡い光に包まれ、前身の生傷や打撲が癒えていく。コウ自身、ヒールをかけてもらうのは初めてのようで、驚きを隠せずにいた。
「体の痛みが消えて…グミさん、二次職の…クレリックだったんですね。しかもこの回復力…30レベルの後半ですか?」
コウは痛みが消えたためか、グミのことを冷静に分析し始める。
「あんまり喋らないで。さっきまで結構危なかったんだから。…それに私、まだ23レベルよ」
「…23レベル!?」グミの発言によってコウは言葉を失う。
(クレリックは30レベルから二次職だろう!? …これが話には聞いたことはあったけど、飛び級ってやつなのか。これならあの強さも伺える。)
「グミー、シュウがいじけてるぞ」
シュウが地面に何かを書いてるのを見て、見るに見かねた我がグミに呼びかける。だが、これもコウを驚かせてしまったようだ。
(なっ…モーニングスターが喋った!?)
「…ピンチを救ったヒーローにあの扱いはないだろ…。しかも俺にはヒールなし」
グミは特に悪びれる様子もなく、
「コウさんは怪我してたんだからしょうがないでしょ! それにあんた…ほとんど無傷でしょうが!!!」
「うっ…さっきレフェルを受け止めようとした時の傷が…これは多分骨まで…」
シュウがわざとらしく演技すると、さすがのグミも少しは責任を感じたらしく、
「わかったわよ。ヒール!」
グミのヒールには全然感情がこもってなかったが、グミの言うとおりほぼ無傷なシュウには十分だったようだ。
「あー癒された。それじゃさっさとあのデカブツを片付けようぜ。」
ヒールをかけられたまま一時呆然としていたコウだが、剣を支えにして起き上がる。
「何度言ったら分かるんだよ…あいつは20レベ後半の俺たちが倒せる相手じゃ…」
シュウは、
「レベルとか、倒せる倒せないの問題じゃない。グミが仲間でいて欲しいから…倒せなくても倒すんだよ!」
言ってる事は矛盾だらけだが、コウにもシュウの言いたいことは伝わったらしい。
「君のバカ差加減には負けたよ。カッパードレイクを…倒すぞ!」
シュウはニヤリと笑い、答える。
「分かってきたじゃねぇか。グミは後ろから援護を頼む」
グミはシュウの言ったことを聞いてなかったのかシュウとコウの間に割り入る。
「援護はするけど後ろってのはいや。だって私も狩り勝負に参加してるんだし…どうせなら勝ちたいもの」
「でも…前衛は…うっ」
グミはものすごい顔で睨んでる。グミが自分の考えをてこでも変えないことを悟ったシュウは、
「……わかったよ。じゃあ前からも援護を頼む」
「うん。それでその恐竜はどこにいったの?」
え…
続く
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