何処から湧いて出たのか、大量の猿とその中心となって走行する戦車……カッパードレイ ク。
その軍隊は俊敏かつ強力な遠距離攻撃(といってもバナナだが、高速で投擲されるため侮れない威力を持つ)と、鋼鉄の剣をも撥ね返す装甲を持つカッパードレ イクの突進攻撃を持ち、そして何より脅威なのが…その数だ。ゆうに100匹以上入るだろう。一体何故こんなことになったのかといえば、話は前日までさかの ぼる必要がある。
…前日。
グミたちは戦士を仲間にするためにPT屋へ行き、そこで紹介されたコウという戦士に会うためにここ…・つまり深い谷と呼ばれる場所まで足を運んだ。
そこでグミが一匹の猿に襲われたわけだが、そいつをシュウはグミの肩越しに狙撃し、コウが止めを刺した。
その後、何だか知らないがシュウとコウが喧嘩になり、狩り勝負になるのだが…問題は猿を倒したことにある…と思う。
どうやら猿はただの偵察で、冒険者を襲ったりせずにただ遠くから眺めていればよかったんだが…・偵察の猿が好戦的だったのか、もしくはグミがあまりに無防 備だったからかはわからないが(我は後者を推す)グミに襲い掛かり、返り討ちになった。
当然仲間の元に偵察が戻ってこない。そこで他の仲間が偵察を探しに来たときには既に偵察の姿はなく、代わりにコウが黙々と狩りをしていたというわけだ。
何故コウだけのときに襲わなかったのかは分からないが、今日になって復讐しに来たと考えるのが普通だろう。
ここまでは全て我の憶測だが、こう理由付けでもしない限り、この状況は説明しえない。…そもそもカッパードレイクは深い谷に生息していないし、第一数が異 常だ。だが、猿やドレイクに協力するなんて考えられるほどの頭があっただろうか。
「おい、茶髪。当然この狩り勝負は続行だよな?」
「あたり前だ! 少なくともグミさんが復帰するまではここで戦うぞ」
「でかい恐竜はどうする?」
「あれは別格だ。僕やお前のかなう相手じゃない…」
「ほう。だったらもしあの恐竜を倒せたら、無条件で勝ちってのはどうだ?」
こいつはコウの話を聞いていたのだろうか。
「そんなことは僕にだって不可能だ。あいつの鱗は30レベル以上の剣でも弾き返すんだ」
「不可能かどうかはオレが決める。ほうほう、敵さんがおいでなすった。レフェル、グミを頼んだぞ!」
シュウはバズーカを片手に猿の軍隊へと飛び込んでいく。きっと我がいなくともそうするだろう。シュウはソウルブレッドを乱発しながら、猿の群れの上に跳躍 する。
「ボム、ボム、ボム!!」
シュウは瞬時にボムを3つ作り出し、自分の真下とその前方へと3段階の距離に分けて投下する。
「ドカン! ドカン! ドカン!」
一つ目のボムが爆発し、その爆風によって誘爆したボムが爆風の道を作り上げる。シュウの直線上にいた猿十数匹のうち、直撃した三匹は消滅、3度の爆炎を受 けた5〜6匹は瀕死、残りは仲間ごと吹き飛ばされる。爆弾を投下した当人は猿の頭を踏みつけながら移動し、爆弾をばら撒いている。もし足を滑らせたりした ら、自分も爆風に巻き込まれ、重傷を負うだろう。いかん効率がいいと言えども、リスクが大きすぎる。
コウはというと…
「スラッシュブラスト!! スラッシュブラスト!!」
赤い刀身と衝撃波が一度に数匹の猿を切り刻み、倒していく。
コウは、何度も猿の攻撃を受けるが表情を変えることなく、一匹ずつ、もしくは複数を斬り飛ばしていく。
この二人にかかればこいつらも案外楽に片付くかもしれない。
「うぅ…気持ち悪い…。もうあんな技二度と使わない」
グミがよろよろと起き上がる。くしくも、グミがもらしたセリフはポーラの感想と同じだった。まぁ気持ちがいいわけないが。
「グミ、見れば分かると思うが…今大変なことになってる。あいつらも頑張ってはいるが、シュウは分からんが、コウの体力はそろそろヤバイ気がする」
「うん。でもどうやってあの猿の中に入るの?」
「アレしかないだろ。グミの唯一の範囲攻撃」
いくらか予想していただろうが、グミはまた吐きそうになる。
「技の副作用(?)も名前のセンスも最悪ね。今度私がもっといい名前を付けてあげる」
「どうせ即興で考えた技名だ。適当に叫んでくれ。それと…読者の前では吐くな」
「誰よその読者って…うっ…」
グミは慌てて口を押さえるが相当苦しそうだ。
「こっちの話だから気にするな。さっさと回転して技を叫べ」
グミは何とか嘔吐をこらえ、さっきよりゆっくりではあるが回転し始める。
「ぐるんぐるん」
回転は先ほどと比べると半分ほどしかないが、グミの負担も少しは軽くなっていることだろう。後は技を何と叫ぶのかが楽しみだ。遠心力により鉄球が浮き上が る。
「グミトルネード!!」
大差ねぇ!!
続く
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