グミたち一同はようやくペリオンまでたどり着く。
岩山に作られた戦士の村、訓練か実戦かは分からないけど、金属と金属のぶつかり合う音や叫び声が、自然と私たちの気分を高揚させる。
「おーい!! 早くこっちに来いよ! オークションやってるぞー!」
シュウはイルを頭に乗せながら、オークションの出品者と入札者の熱い戦いの中こちらに向かって叫んでいる。完全にここまできた理由忘れてないか……
私はシュウのそばまで走っていき、本来の目的を思い出させてあげようと話しかけるが、入札者たちの喧騒にかき消されて、全く聞こえてないみたいだ。
「200k」戦士の入札者だ。
「くそっ 300k!」これまた戦士
「350k…これで降り」さっきの入札者
「400k」赤い服に赤いマントを来た戦士が無感情に入札する。
「……」
「他に入札者はいませんか?」司会者は辺りに問いかけるが、反応が薄い。
「いないようですので、ザクさんの400kで落札です」
あぁ〜と周囲の残念そうな(?)声が響き渡る。
出品者は出品されていた飾り気はないが長く、細身の長剣「ハイランダ」をザクと呼ばれた人に手渡し、代金を受け取っていた。そこに聞きなれた声がする。多 分シュウだと思う。
「くぅ〜!! ハイランダってカッコイイなぁ! 俺も500kで入札すればよかったよ」
シュウはザク氏の肩に立てかけられた長剣を見つめながら、1人でつぶやいている。所持金-10kのくせに何が500kよ! 私はレフェルを振り上げ、シュ ウの後頭部めがけて振り下ろす。
「にゃ〜〜〜!!」
イルはとっさにシュウの頭から飛び降りる。シュウはいるが頭からいなくなったことに気付き後ろ…・私のほうに向き直るが、勢いのついたレフェルはとまらな い。
「ゴンッ!」鈍い音。レフェルの柄の部分がシュウの鼻に直撃し、シュウはその場に倒れこむ。これじゃあまるで私が悪いみたいじゃない…皆呆然と私を見てる し。
シュウは鼻血を流しながら、何か言いたそうな目でこちらを見る。
「いぎなりなにずるんだよ。いだいじゃねえが」
大体何をいってるかは分かったけど…聞き苦しい。しょうがない。
「ヒール!」
シュウの鼻が元通りになる。鼻血はついたままだけど。
「いったい何するんだよ!」
シュウは、怒りをあらわにしてこっちに向き直る。
「あんたがここに来た目的を忘れてるからでしょ! 少しは思い出した?」
シュウは血をぬぐいながらも、思い出そうと頑張っている。やっぱり忘れてたんだ。
「そーだ!! こいつだろ」
シュウは自分の頭を指差して何か言っている。
「頭がどうかしたの? そのアンテナが電波でも受信した?」
「電波はこねぇよ! 電波じゃなくてネコだよ。ね こ! …ていないし」
シュウはやっと思い出したみたいだけど、シュウの言ったとおりイルがいない!そういえばさっき…。
「グミが俺を殴るから!」 「シュウが遊んでるから!」
お互い顔を見合わせて同時に言う。私は顔が赤くなるのを恐れて、話題をそらす。
「そんなことより、早くイルを探さないと! せっかくここまで来たんだから。」
「わかってるよ! …ん? なんか向こうからネコの匂いがするぞ」
イルの匂いって…といいつつも他に手がかりもないので、シュウのアンテナが向いた先に走り出そうとする…が、自分の周りを見てびっくりする。だってオーク ションそっちのけで入札者も、出品者も、近所の子供までこっちを見てたんだから。
*
「待て〜!! ネコ〜〜〜!!」
私たちは”また”イルを追いかけている。コレで確か三度目になるかな? どうしているの 居場所が分かったのかというと、奇跡的にシュウの勘が当たっていたのだ。本人は匂いで分かったと言い張っているけど、もしそうだとしたらシュウは人間じゃ なくてケダモノだ。
「イルー! 逃げないで〜〜!!」
止まらないと分かっていながらも、私は叫び続ける。そのときイルは何かにぶつかって、立ち止まる。
「にゃ!!」
ここからじゃよく見えないけど、なんだかものすごく怯えているようだった。私はイルにぶつかった何かに感謝しつつ、全力で走る。イルにぶつかった人らしき ものはイルを抱き上げる。
「ふぅ…やっと追いついた。どなたかは知りませんが、どうもありがとうございます」
私は軽くお辞儀をする。シュウは何してるのかしら? 私より先に行ったはずなのに。いつの間にか追い越してたみたい。「シュウ! 何してるのよ。」と言お うとしたが、シュウは目を見開いたまま硬直している。もしやと思って、振り返ってみると…。
「やぁ…君たちがネコを届けてくれたのかい?」
褐色の肌に、奇抜な服装・・大きな口から覗く白くとがった歯…いかにも食人族じゃん……
続く