とぐろを巻いた大蛇、睨まれて固まったままのイル。もし私が蛇だったら迷うことなくネコ をひと飲みだ。口から覗く鋭い牙も、緑色した太い体も必要ない…口に入れて飲み込むだけ、10秒もあれば十分。冬眠前の腹ごしらえには少し足りないけど、 まぁ気休め程度にはなるだろう…ってこのままじゃイルが危ない!!!
「俺がやる…!」
「バズーカもボムもだめよ! イルに当っちゃう」
レフェルもあそこまでは届かない…。シュウは不敵に笑っているけど…どうするつもりなの?
「俺の武器はバズーカだけじゃ無いぜ…」
シュウは両手をだらりと下げ、袖から何か出す。2つの小さな鉄の塊…拳銃だ。
大蛇は鎌首をもたげ、今にもイルを飲み込もうとしている。イルはぎりぎりになって逃げようとするが、間に合わない!
パンという乾いた音、その刹那…脳天から青い血を流し大蛇がのけぞる。
「そのネコにはこのシュウ様が指一本触れさせねぇ。グミは危ないから下がっててくれ」
シュウは両手の銃を大蛇に向けて格好つけている。。
「シャアアアアアアア!!!!」
額に銃弾を受けたはずなのに、大蛇は平然とシュウめがけて飛びかかる!あのにょろにょろした体でものすごい瞬発力…シュウは辛うじて身をかわすが、大蛇は 轟音と共に洞窟の内壁を削り取る。もちろん当たったりしたらただでは済まない。シュウは無理な体勢のまま、双銃の引き金を引く。
「パン! パン! パン! パン!」
「シャアアア!!」
都合4つの銃弾は正確に大蛇の頭部を狙うが、2発は狙いをそれて首もとの鱗を剥ぎ取る。
「ちっ…あと7発…!!!」
シュウは一歩バックステップし、間合いを取る。あれは…何か狙ってる目だ。それを知ってか知らずか、大蛇は高速で地面を這う。その距離わずか10メート ル…大蛇の瞬発力ならば0ともいえる距離だ。
「パン! パン!!」
シュウの放った弾丸は、蛇の頭蓋を砕き地面につなぎとめるはずだったが、貫いたのは大蛇のスピードによって生み出される残像…大蛇はその名の如く、くねく ねと蛇行して銃弾を避けていた。
「シャアアア!!」
大蛇は凶悪な顎を開き、威嚇している。シュウは目にも止まらぬ速さで大蛇の頭部をポイントする。どっちが速い!!?
「パン! パン!!」
シュウだ! 勝ったと思ったのも束の間、シュウは強烈な尻尾の一撃で壁まで吹き飛ばされる。さっきの威嚇はフェイントだったのか!!?
「ぐっ…。ちっくしょ…ヘビって言うだけあって小賢しいじゃねぇか」
シュウは口から血を流しながら、大蛇を見据える。気絶こそしなかったけど、かなり危ない状態だ。私のヒールで…。
「シュウ、早くヒールを!」
「来るな!!」
「な…何言ってるのよ!この非常事態に!!」
「いいから…まだやれるって!」
シュウはふらふらと立ち上がり、右の銃で大蛇をポイントする。かなり危なげだ。
「シャアアアアアア!!」
大蛇はその鋭い牙でシュウを串刺しにすべく飛びかかる。やられる!
「ほらよっ」
シュウは握っていた左手からボムを大蛇の口内めがけて投げつけるが、大蛇は避けずにボムごとシュウを亡き者にしようと突っ込む。
「お遊びは終わりだ」
笑っていた。今にも自分が殺されるというのに…いや違う!
「パン!!」
右手の銃が小さな火と共に、灼熱の弾丸を吐き出す。目指すはシュウ自らの放ったボム。銃口とボムを結ぶ直線を鉛弾が疾走し、激突する。
「シャアア?」
爬虫類特有の細長い瞳がますます細くなり、「ドカン」という轟音が鳴ると同時に大蛇の体が風船のように膨らむ。
ボムが銃弾の衝撃によって炸裂したのだ。しかし、爆炎は大蛇と共にシュウをも吹き飛ばす。大蛇はその場にへたり込み、シュウは洞窟の奥へと吹き飛ばされ る。
「ってて…やったか!?」
お願い…起き上がらないで。私の願いは届かず、大蛇はよろめきながらも起き上がり、シュウめがけてタックルする。
「まだ動けるのかよ…。でも、んな遅い攻撃…」
大蛇の攻撃は最初より遥かに遅い。が…
「にゃ〜」
イルはシュウの後ろで固まったまま…なんとか一声鳴いたようだった。シュウが避けたらイルは…。
「ネコ!! ちっくしょーー!!!!!!!」
シュウは両手をクロスさせ攻撃に備えるが、弱ってるとはいえ大蛇の膂力は半端ではない。大蛇は牙をむき出し、シュウの体めがけて振り下ろした。
続く
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