「にゃにゃにゃにゃああ!!!!(助けてー!!)」
私がシュウに呼ばれて、ここにもぐりこんだ時にはイル既に蛇に取り囲まれ、威嚇されていた。
このままじゃあの蛇たちに襲われちゃう…でも蛇にしてはちょっと短いような…。
「グミ!こいつらもしかしたら魔物かもしれない。何か調べるものはないか?」
調べるもの調べるもの…あった! シゲじいの図鑑。私はイラストを見ながら必死に短い蛇を探す。
「あった!『ジュニアネッキ。容貌は小さくかわいらしいが、攻撃力や防御力が意外と高く凶暴。また冬が近くなると冬眠するようである。冬眠時は気がたって いることが多いから注意が必要。』」
…今思いっきり秋だよ!冬眠シーズンに当ってる可能性が高いかも…。
「こいつら結構強いのか…よし! 早速俺の新スキルを!!!」
「ちょっと待ってこんなところで…」
危ないと忠告しようとしたけど、わずかに遅い。シュウの左手に紅い光が集まり、楕円形をしたものが出来ていた。
「食らえ! ボム!!」
シュウの手から放たれたボムは小さな弧を描きながら、カチという音を立てて地面に落ちる。たしかあれって衝撃でも爆発するんだっけ? 私は頭を抱えてその 場にうずくまる。
「……(シーン)……」
爆発しない…。もしかして不発弾? シュウらしいというかなんというか…。
「おい…爆発しないぞ? まぁいいか…ネコ連れてさっさと逃げよう!」
シュウはネッキの群れなど気にもせず、わずかな足場を通ってイルへと向かうが、イルは微動だにしない。蛇が怖いのかな? それともシュウの顔が怖いのか な?多分後者が有力だけど。
シュウはイルを抱きかかえると元来た道を戻ってくる。
「よし逃げるぞ!」
「うん」
私とシュウは出口に向かって走る。いや正確には走ろうとする。何でそんな表現になるかというと…・出口の方向にもネッキの群れが待ち受けていたからだ。
「取り囲まれたか…しょうがない。こうなったらこいつで吹き飛ばすまでだぁ!!!」
シュウは背中のバズーカを取り出し、榴弾をこめる。まさかこんなところで撃つ気か!!? 私はとっさにシュウの手を押さえる。シュウはいかにも不満そうに こちらを向く。
「何で止めるんだよ! やらなきゃやられるだろうが!!」
「ここは洞窟なのよ!? そんなものぶっ放したら生き埋めになるでしょうが!」
「そうだった…あぶねぇあぶねぇ。ってうわ、痛てえ!」
シュウの腕には2匹のジュニアネッキが噛み付いていた。シュウは腕を振ってネッキを取り払おうとするが、取れない! そういう間にも無数のネッキが飛び 掛ってくる。って私のほうにも来てるし!
「グミ! 後ろからも来てるぞ!!」
レフェルが叫ぶ。私は体をひねりつつ、レフェルを振り回す。5〜6匹のネッキは吹き飛ばされるが、もう一度かかってきそうだ…
「分かってる。こうなったらマジックシールドで…」
呪文を唱える準備をしようとする私を、シュウが遮る。
「待った! その呪文使ったら、またぶっ倒れちまうんだろ? ここは俺に任せろ」
シュウの手のひらに紅い球体が現れる。ボムはダメだっていったのに…。
「ねぇ…ボムはだめだって…さっき…」
「おりゃああああ!!」
…投げてる!!!?
あんなスピードで投げたら、今度こそ爆発する!! 洞窟の奥へと紅光は飛んでいく。
「ボン!」
しょぼ…。爆発したけど…・あれじゃ爆竹と大して変わらない。
「シュウ、何あれ…何の意味が?」
「今のは加減したんだよ。ほら見てみ…」
尻尾に火がついたネッキが逃げ回ってる。もしかして弱点? そんなことモンスター図鑑に書いてたっけ?
シュウは私が考えているうちに、出口に向かってもボムを投げる。ボンという軽い音と共にネッキの群れが散乱する。
「よし! 道が出来た。逃げるぞ!!」
「イルを忘れないでよ」
「イル? あぁネコか。さっき肩に乗せて…」
「いないじゃない! どこにやったのよ!!」
「そうか、さっきへビを振り払おうとした時ぶっ飛んだんだ!!」
おいっ!
「じゃあイルはどこにいるのよ?」
「多分奥の方に飛んだんじゃないか?」
「にゃあああああ!!!!!!」
「イル!!」「ネコ!!」
私たち二人はイルの鳴き声がした方向に振り向く。
「シャァァァァ!!!」
耳を塞ぎたくなる様な金切り声。
「おい…なんだよあのでかいヤツ。しかもあいつの目の前で固まってるのがネコじゃ無いか?」
緑色の鱗をぎらぎらさせた大蛇。もしかしてジュニアネッキの産みの親…?
続く
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