生い茂る草木の中、一匹のネコが駆けている。
(はぁはぁ…このままペリオンに連れて行かれたら、きっと食われるに決まってるにゃ! 早く遠くに逃げにゃいと…)
ネコは道なき道を進み、襲い来る魔物の襲撃を避け、どんどん森の奥深くに入っていく。それを追いかけるグミたち。語り部不足で管理人が語り部
「まてこらぁ!! ネコー! 邪魔するんじゃねぇ雑魚スライム!」
シュウは目の前にいるスライムの「しずく(スライムの頭部についた鞭状の組織)」を掴んで、遠くに放り投げる。
(しつこいやつらにゃ…)
「イルー、そっちは危ないかもしれないよ! デンデンは邪魔しないで!」
グミはデンデンを足で蹴っ飛ばす。
(食人族に食われるのも大して変わらないにゃ。)
「ネコに言葉が通じるわけないだろ…。喋ってる暇が合ったらさっさと走ったほうがいいと思うぞ」
「レフェルは黙っててよ!」
「…はい」
(ネコだって人間の言葉くらい分かるにゃ。あたしはまだ小さいから喋れないだけで…というよりメイスが喋った…?)
ネコは更に森の奥深くへと入っていく。が、しかし奇妙な物音を聞き、身を潜める。
「エリニアって平和ねぇ…」
「何言ってんの! 今は平和かもしれないけど、いつゾンビルーパンが襲撃に来るのかわからないのよ!!」
「大丈夫よ。きっとハインズ様が守ってくれるわ」
「そんなことわからないじゃないの…そもそもハインズ様があんなもの作らなければ…ブツブツ」
(あの羽が生えたちっちゃい人間みたいの何にゃ? 見たことないけど、もしかしたらあいつらの仲間かもしれないにゃ!)
ネコはエリニアに背を向け、太陽の見える方角へと走っていく。
「グミ!ネコが曲がったぞ」
「OK!あっちの方向ね?」
二人は息を切らしながらも、ネコを追いかける。理由は…・4章3を読んでいただければお分かりだろう。
(流石に命がかかってると必死だにゃ…。にゃ? あそこにいい感じの洞穴が…。)
ネコは、人が一人は入れるくらいの小さな穴の中に身を隠す。
(ここならみつからにゃいでしょ…。ここって入り口は狭いけど中は広いのにゃ。)
その頃グミたちは…イルを探していた。
「イルー!! お願いだからでてきてー」
「ネコー! どこいったんだよ。マジで出てきてくれないと俺ら…」
「もう…シュウが乱暴するからイルが逃げたのよ」
「いや…多分自分の行く末が分かったからだと思うけどな」
(ご名答。あのアンテナ頭見直したにゃ。それより一休み一休み…)
「ほら…あの目つきの悪い人…名前忘れたけど、食人族っぽい人ってだけで、人を食うなんて一言も…」
(食人族っぽいってだけで十分危険にゃ)
「いや、食人族っぽい時点で問題ありだろ」
「否定ばっかりしてないで、ちょっとは探してよ! 頼りにならないわね」
「そうだな…頼りにならないってのは余計だがな」
シュウは辺りを散策し始める。
「もしかしてレフェル、どこにいったか知らない?」
レフェルはあんまり気乗りしない様子で、
「知ってたらとっくに教えてるがな…まぁもし我がネコなら、見つかりづらい所か、狭くて自分以外は入れそうもないところに入るが」
グミが手を口に沿え、メガホンのように叫ぶ。
「それよ! シュウ〜!! 狭くて見つかりづらい所ない〜?」
「それならさっきからこの穴が怪しいと思ってるんだけどな…ちょっと覗いてみるか」
(まずいにゃ…奥に逃げないと。)
イルは真っ暗な通路を一目散に逃げていく。イルの足音はほぼ無音だったが、シュウは気配だけでイルの存在を感じ取り、グミに知らせる。
「グミ! ここだ。ここにいる! 先、中入るぞ!」
「わかった。今ランプ準備してそっちにいくから!」
(やばいにゃ…捕まったらきっと焼いて食べられちゃうにゃ。もしかしたらねこ鍋にされるかも…)
「待てネコ! 逃げるんじゃねぇ!」
シュウの怒鳴り声が洞窟内に反響する。
(待てと言われて待つヤツなんか人間にだっていないにゃ。ん…なんだろう、あの黄色い点々…)
グミもようやくランプに火をいれ、狭い洞窟内へと入っていく。中に巣くってるものの正体など知らずに。
(なんだか明るくなったにゃ…。…あれは!?)
「にゃー!!」
やっとシュウがイルに追いつく。
「ネコ、何か叫んでたが大丈夫か? ってなんだこりゃあ!!!!」
イルやシュウが驚くのも無理はない。洞窟の奥には目を血走らせた大量の蛇が鎌首をもたげていたのだから。
続く
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