「…まず、この大陸にはいくつの街があるか知っているか?」
目つきの悪い男は唐突に質問する。……分からないからきたんじゃない。 こうなったら正直に言うしかないか…。
「私、3日(?)くらい前にリスに着いたばかりで、ここの事は良く知らないんです。シュウは知ってる?」
シュウは「あぁ」と軽くうなづき、答え始める。
「えっと…まずここ『リス』。次に俺の地元『カニング』。戦士の町『ペリオン』に…弓師の『ヘネシス』だ。…あとなんだったかな?」
「そっちの女はしょうがないとして…大陸生まれならそれくらい常識だろ。お前が忘れていたのは魔法使いの『エリニア』だ」
「いやぁ…エまでは分かってたんだけどさ」
私の目の前では知らない地名らしき言葉…エリニアとかペリオンとか…きっと町の名前だろうけど、どんなところだろう?
「それともう一つ…この大陸の中心にはもう一つ町があるらしい。俺も行ったことはないが、なにやら大きなダンジョンがあるそうだ」
「へぇ…そいつは初耳…。ところであんた、この何も知らない女の子に町の事、教えてやってくれないか?」
少しカチンと来たけど事実だし、何か言ってる場合でもない。私は大人しく「町について教えてください」という。
「では順を追って説明していこう。『リス』は、説明する必要もなく今俺たちがいる町だ。ここには島からの船着場と、転職場くらいしかない。まぁ初心者が必 ず通る町ではあるがな」
「なるほど…」
「次に『ペリオン』だが、ペリオンは荒野の中にある町で、主に戦士が仕切っている。血気盛んで野蛮なヤツらも多いが、ペリオンマーケットや酒場といった、 冒険者行きつけの場所もある。あとこれはお前らには関係なさそうだが、戦士専用の転職場がある」
…聞いた所、結構いい町みたい。
「次は『カニング』。ここは盗賊やガンナーが多いな。手癖の悪いやつらが多いから持ち物には気をつけたほうがいい。確かそこには廃地下鉄や病院、養成学校 など…なんかよく分からないものが多い」
「いいとこだぜ。今度俺が熱く語ってやる」シュウのことは軽く流す。
「そして今度は平和な町『ヘネシス』。ここは弓師の町で比較的平和だ。ヘネシスマーケットと弓師転職場以外は特にめぼしいものはない」
「ふむふむ」私は適当に相槌を打つ。
「次は魔法使いの町『エリニア』だ。エリニアは深い森の中にあって、魔法使いや妖精がいっぱいいる。…確かエリニアには魔法使い転職場と、忍耐の森があ る」
「忍耐の森って何ですか?」
「忍耐の森って言うのは、その名の通り忍耐がいるが、奥に進んだ先には幻の薬草があるそうだ」
「ありがとうございます!」
「そして最後に…眠る森『スリーピーウッド』。大陸の中央にあるらしいが、俺はまだ行ったコトがない。その真相は自分で確かめてくれ。他に質問はある か?」
質問すること何かあるかなぁ…? そうだ。次どこに行ったらいいのか聞いてみよ。
「私たちが次に行った方がいい町はどこですかね?」
「そうだな…。カニングなんてどうだ? 治安は悪いが冒険者なりたてにはちょうどいい」
シュウが慌てて口を挟む。
「カニングはダメだ。絶対ダメ!!」
なんだか分からないけどどうしても行きたくないというのが顔に書いてある。
「何がそんなに嫌なの?」
「まだあそこを出て3日しか経ってないのに戻ったら…みんなにバカにされる」
なるほど…行きたくないって気持ちも分かる気がする。
「カニングはダメみたいです」
「そうか…じゃあペリオンはどうだ? 旅始めの装備を調達するのにうってつけだ」
「シュウ…ペリオンは大丈夫?」
「あぁ…ペリは俺も行ったことないが大丈夫だ」
それって大丈夫って言わない気がするんだけど…まぁいいか。
「じゃペリオンで決定! えっと…今日はありがとうございました!」
「ペリオンに行くなら、ちょっと旅資金稼ぎに仕事を請けてみないか? ちょっとした護衛なんだが」
なるほど…どうやらこの人の本職はこういう旅先案内に加えて、冒険者に護衛を頼むっていう仕事なんだ。お金がもらえるのは嬉しいけど…どんな仕事なんだろ う。シュウに相談してみよう。
「シュウ、どうする?」
「まず報酬を聞こう」
がめつ…。
「報酬は前金5k、無事に届けられたら向こうから5k…計10kだ。お前らは目的地にたどり着く。おまけに装備を買うお金までもらえるんだ。悪くないだ ろ?」
「その話乗った!」
「ちょ…ちょっと!」
私の意見はどうなるのと言おうとしたけど、ちょっと遅かったみたい。
「OK。仕事の内容はさっき言った通り護衛だ。ほら前金の5k」
メル紙幣の入った封筒が渡される。ひ〜ふ〜み〜…確かに5kはいってるけど…肝心の護衛する人はいったいどこに? 私が聞こうと思ったことを、そのまま シュウが聞く。
「確かに受け取った。で、護衛主は?」
「お前たちが護衛するのはこいつだ」
旅先案内人は後ろの方からなにか持ってくる。
「にゃ〜」
にゃ〜!?
続く
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