「ええっと…これが冒険者ライセンス。名前はそれぞれ確認してね」
いつの間にとったのか写真と名前が入った、2枚のカードが渡される。
[シュウ レベル20 17歳]
[グミ レベル20 16歳]
「あの…この名前の隣にある『レベル』ってなんですか?」
「あぁ…これは君たちの強さのことだよ。本来なら試練を受けることが許されるのが10レベルで、転職後は魔法使いを除いて一律10レベルスタートなんだ が、君たちの強さはどう見ても10レベなんてものではなかったから、私の独断で20レベルにさせてもらったよ」
「へぇ…そうなんですか。えっと…後は間違いないです」「俺も間違ってないー」
よく見るとシュウは私より一つ上だったみたい。考え方や言動なんか見るとどう見ても私より下だと思うんだけどなぁ…。
「間違いはないみたいだね…それじゃあお待ちかねの…」
審査官はカバンの中から、2冊の手帳のようなものを取り出す。文章はおろか、タイトルすら書いていない。
「よっ! 待ってました!」
シュウがはしゃいでるいったいなんだろ、あれ。審査官が手帳を手に取り、説明を始める。
「これがかの有名な『スキルブック』だ。今はまだ何も書かれていないがね」
 スキルブック…名前からしてなんとなく分かるけど、一応聞いてみようか。読者のためにも
「あの…スキルブックって何ですか?」
これには審査官だけでなく、シュウも心底驚いたようだった。というよりシュウは椅子から転げ落ちた。そんなに常識的な質問だったのか…。審査官の説明によ ると、
「君はこれが欲しくて、試練を受けたんじゃなかったのかい。これはだね…契約した人のスキルが自動的に書き込まれるという、魔法の本なんだよ。ちなみに最 初の契約によって、その人の特性、身体能力、精神、素質など…詳しいことが全て分かっているわけではないが、とにかくその人にぴったりの職を決めるとい う、大切な役割を持っているんだ」
「契約ってどうやったら出来るんです?」
「君は本当に何も知らずに試練を受けて、しかも受かったんだね…。契約って言うのはホ…ここに一本線が引いてあるだろう。ここに自分の血で署名するんだ。 そうすればこれは世界にただ一つの、君のスキルブックになる」
ぇ…血を出すの?
「審査官!! まず俺にやらせてくれ!」
椅子に座りなおしたシュウは、契約の話を聞いてすぐに言い出す。
「好きなタイミングでやってもらって構わないよ。いつかいても結果が変わるわけじゃ無いし……でも一生物だから…」
審査官が最後まで言い終わる前に、シュウの人差し指は彼の口の中に入っていた。
もしかして!? 予想通りシュウの顎は、自らの指を噛む。
「痛てー噛み過ぎた!」
シュウの指からはどくどくと血が流れている。いくらなんでも噛み過ぎよ…。
 シュウは血が飛び散るのも構わずに自分の名前を手帳に書きなぐる。血が飛び散ってなんて書いているのかなんてまるで分かりやしない。もともときれいな字 じゃなさそうだし…。審査官もたまらず言う。
「シュウ君、それは一生物なんだけどな。まぁ、持ち主のスキルが表示されるわけだから、再発行も一応出来るけどね。それにそんなに激しいことしなくても、 ほら」
審査官がポケットから鋭い針を取り出す。それを見て私は、口の中に入れていた指を慌てて取り出す。危ない危ない。そんなものあるならもっと早く言ってくれ よと、シュウが毒づく。最後まで話を聞かなかったシュウが悪い。
「後でヒールしてあげるから…静かにしてよ。それと針借ります」
 人差し指に針を突き刺す。チクっとした痛みとともに、赤い球が指先に現れる。そういえばシュウって肩を思いっきり突き刺されてなかったっけ? あれくら いじゃ痛くないのかもしれないわね。まぁあいつのことなんてどうでもいいや…早く書かないと血が固まっちゃう。。
 私の指はゆっくりと、私の名前を書き出していく。グ…ミ…っと2文字だから楽ー。よしそれじゃあ
「ヒール!」
私とシュウの指先から出血が止まり、何事もなかったように傷がふさがる。
「契約は終わったみたいだね。…む、グミちゃんのはもう変化し始めたぞ!」
 私のスキルブックの見出しに、見る見るうちに字が浮かび上がってくる。
「『ク…レ…リ…ック』」
それを見た審査官は、またもびっくりする。
「な……クレリックは2次職だぞ!?普通はマジシャンだ。それに普通は反応までに5分程度かかるはずなのに…。こ
んなに早く職が決まるなんて!?」なにやらすごいらしい。審査官の声にも勝って、シュウが叫ぶ。
「審査官!! 俺のも何やら浮かんできたぞ!!」
3人…いや、レフェルもあわせたら4人の視線はシュウの本に集中する。果たしてシュウはガンナーになれるのか!?
続く
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