広大なドームはとても樹の中にあるとは思えない。レフェルによると、大樹の上の方で枝 分かれした大枝の一本の上にあるのだそうだ。いつ見たのかは知らないけど、設計資料の中にあったらしい。
 どっちにしても、呆気にとられるほどの大きさだよね。普通の人に、エリニアの黒い大樹には世界最大級のカジノがあるなんて言っても絶対信じてもらえない だろう。それぐらいにこの施設は巨大で、浮世離れしていた。
 コロシアムから競技前の準備があるということで私たちは追い出され、もとのカウンターの前に戻っていた。その旨の伝え方というのも、番兵の二人が大声で わざとらしく会話していたものからなので、やはりこのコロシアムは競技中以外は立ち入り禁止を徹底しているらしい。
「私たちは例外だったみたいだけど」
 誰ともなく呟く。といっても喋る相手なんてレフェルしかいない。当のレフェルも独り言だと思って聞き流しているようだ。
 別に返事をもらえなくてもいい。ただ、一刻も早く二人に会いたかった。
「見学は終わったのかね? 暗い顔をしているようじゃが」
「わっ……びっくりした」
 本当にびっくりしたのかどうかも疑問に思えるような暗い声を上げて見上げると、長身のゴードンさんが覗き込んでいた。いつの間にかやってきていた販売員 の人は忙しく新聞や情報を売り買いしている。忙しそうなのに私たちにかまけていていいのだろうか。
「ふぉっふぉっふぉ、いいんじゃよ。ああいうことは若いもんに任せておけば。それよりも言伝があっての。クラウン様が応接間でお待ちじゃ。話しておきたい ことがあるそうじゃから、行って来るとよい。試合まではまだ少しあるでな」
 私はこのおじいさんに容易く心を読まれたらしく、ついでにクラウンに会って来いとまで言付けられてしまった。正直な話、あまり行きたくない。行くかどう かは後でレフェルに意見を聞いてから考えることにして、今はこの場から去ることだけを考えよう。そうでもしないと、あの売ってる人がかわいそうだ。
「伝言ありがとうございます。それじゃ、私たちはこれで」
「また来るんじゃよー」
 おじいさんは語尾にハートでも付いてるような猫なで声で手を振り、少し名残惜しそうな顔をしながらも、いそいそと自分の持ち場に戻る。既にカウンターに は十人近くの客が並んでいた。
 きっとここで情報を買って行く人たちは全員コロシアムに賭ける人たちであり、全員がM単位の大金をそこに賭けるのだろう。自分が勝ち、100M以上の大 金を手にすることを夢見ながら。
 でも、この勝負は私たちが多分違法な手段で勝とうとしている。偶然私たちと同じ結果を予想する人がいたら、その人と半々の分け前になる。しかし、そんな 人がいっぱいいるはずもなく、ほとんどの人は大金を失うことだろう。私たちの運命の操作によって。それに、もしも自分の命を賭けて最後の勝負に挑んでいる 人がいるとすれば。その人は私たちのせいでどこかに連れて行かれて、最悪死んでしまうことになる。
 そう考えるといても立ってもいられなくなった。私は意を決すると、手にしたレフェルに思いを伝えることにする。
「レフェル、やっぱり私たち、この勝負やめようよ。他のゲームで勝てばきっと二人だって助けられる。私たちだけがずるいことをして、他の人が死んじゃうか もしれないなんて嫌だよ」
 思ってたこと、全部は伝えられなかったけど、大体のことは言えた。自分でも甘い考えだとは思う。でも他人を蹴落としてまでなんて考えると、我慢できな かった。
 レフェルは何も言わず、黙っている。私を説得しようと深く考え込んでいるのか、甘い考えは捨てろと喝を入れるのかは分からない。とにかく、どんな言葉で も聞き入れようという覚悟はあった。でも、どんな言葉にも流されない自信もあった。
 少しの間待った後、言葉が発せられたのは腕の中の鈍器からではなく、肩に乗せられた手からだった。
「グミ様、なかなかいらっしゃられないようなので、こちらから出向いてしまいましたよ。それとお言葉ながら今の発言はこのような場では厳禁とされておりま す。他人を蹴落としてこそのゲームなのですからね」
 清潔そうな手袋に覆われた手の持ち主は、さっきゴードンさんに言われたクラウンその人だった。顔にはいつもの貼り付けたような笑顔を半分だけ。笑みの形 に歪められた片目だけで、背筋に冷たいものを感じる。レフェルが黙っていたのは、クラウンがそこにいたことに気づいてたからだったのか。
「クラウン、どうしてここがわかったの……?」
 私がそう尋ねると、クラウンは優雅に右手を上げて言った。
「このカジノ全域は私の管理なのですから、グミ様方を見つけるのは容易いことです。一部のVIP以外の個人情報や所持金、勝率からペットの名前まで存じて いる次第にございます」
 ぞっとするようなことを平気で言うクラウン。その言葉の真意は、私たちのことなど何でもお見通しなんだということをわかりやすく告げていた。
 後ずさりしながらも、私たちの作戦がばれることを恐れて私は質問を変える。
「は、話したいことがあるって聞いたけど」
 その一言でクラウンは大げさに私の記憶力を褒め、ほんの僅かに声色を変えて言う。その僅かな変化だけでただならぬものを感じ、無意識のうちにレフェルを 強く抱きしめる。
「次のコロシアム、かならず勝てるシナリオを私なりに考えました。見ていただけますか?」
 意外な一言に拍子抜けする。てっきり、私もまだ聞いてないレフェルの作戦を全部知られてて、レフェルを取られてしまうのかと思ったけど、違うみたいだ。 でも、まだ警戒は解けない。もし、レフェルを取られてしまったら、私は何も出来ない小娘に成り下がる。
 私はいつでも逃げられるように、最大限警戒しながらクラウンを睨む。クラウンは肩をすくめるようなそぶりをしながらも、笑みを崩すことはない。しかも、 いつの間にか小さく折りたたまれた紙片を手にしていた。どう考えてもクラウンの言っていた”必ず勝てるシナリオ”が書いてあるに違いない。
 クラウンの行動はいかにも怪しい。でも、必ず勝つようなシナリオをなぜわざわざ私に見せるというのだろう。レフェルのときも疑問に思ったけど、それをク ラウンがやるというのだから、更に怪しい。
 しかし、その不審さよりも私の興味のほうが上回った。少し怖いながらも、どんなことが書いてあるのか確認してみたい。
「必勝のシナリオ、どうしてそんなのを私に見せるのか分からないけど……いいわ。見てあげる」
「そう言って下さると信じておりました。では」
 クラウンの手が折りたたまれた紙片を広げていく。小さな白い四角だったものが長方形になり、また形を変え、最終的に蛇腹のようになった一枚の紙が現れ た。どうやら、それはさっきコロシアムでレフェルと一緒に眺めた対戦表であるらしかった。
 クラウンがさっと手の甲を返すと、対戦表に書かれていた結果が目の前に見せ付けられる。白い紙に浮かび上がる19の目玉。ほとんど全ての目が見開かれ、 黒く、底の見えない漆黒で塗りつぶされている。唯一まぶたの閉じられていた目玉の下には”Unknown”と書かれていた。
 クラウンが指し示す結果はつまり……アンノーン以外は全滅という結論だった。
 その紙から想像される惨状に一瞬表情を失くす。その私を弄ぶかのように、クラウンはいつもの慇懃無礼な態度で囁いた。
「結論を言いましょう。アンノーンが出てから一分以内に人間側は全滅します。もちろん、気絶などといった甘い結末ではなく、たとえその人間が意識を失って いたとしても、アンノーンは追い討ちによる死を与えるでしょう。そして、仲間であるはずのモンスターも目障りだとか、邪魔だったとか、特に理由もなく殺す ことでしょう。よって、最後まで生き残るのはアンノーン一体です。同じ予想をしている賭け主も少なくないと思いますよ」
 この紳士振った化け物は、アンノーンの正体を知っている。そして、その恐ろしさ、残虐さを私にわざわざ伝えに来たのは、私を思っての行動なんかではまる でなく、ただ、私を絶望のふちに追いやるためのものでしかない。
 なぜなら、その結果通りに事が行われるとすれば、シュウもユアさんもコウくんもふぇありーさんも惨殺されてしまうのだから。そんな中、私はクラウンの 言ったようにして賭けに勝ったとしても、負けたことと同義になってしまう。全員生存の上に、勝利。これ以外に私の勝ちはない。
 しかも、クラウンの存在によって、この勝負を降りることは出来なくなってしまった。誰かを蹴落としてでも勝ち残るという言葉を無理やり実践させるかのよ うに。
「どうしてこんなことするのよ……私はただ、みんなとここを出たいだけなのに」
 悔しさと苦しさから声が震える。殺したいくらいクラウンのことが憎かった。
「偶然ですよ、偶然。当カジノでは観客を飽きさせないために、月に一度くらいは競技者をリセットするのです。ですから、偶然今回の競技者がリセットされ、 次から新しい競技者が入る。これには参加者の読みを狂わせたり、今までのデータをリセットすることで読みにくくさせるという……」
「何で今なのよ! 私たちの大切な仲間が戦うのよ! どうしてこんなひどいことを……お願い、なんでもするから、やめて。アンノーンを出させないで」
 クラウンに掴みかかって、怒鳴る。背が低くて襟元を掴むというよりも、つかまってるようにしか見えなかったとしても構わない。泣き落としでも、なんでも いいから二人を助けて欲しかった。
 しかし、哀願する私の手を優しく解き、クラウンは言った。
「彼らは運が悪かった。あなたは運が良かった。残念ですが運命なのです。例え操作されていたとしても、それは初めから操作されることが運命だった。違いま すか? 万に一つもありませんが、偶然貴方の仲間が生き残ったとして、彼らにはあそこから出る手立てがありません。彼らはまだ生かされている、ただそれだけのこと だけで、死ぬことからは逃れられません。いいじゃないですか、どうせ生を持って産まれてきたものは、いつか死ぬのですから。その時期が早まっただけです」
 並べ立てられる、直視できない現実。全て、ありもしない空想のように思いたかった。涙が出てるのに気づかないほど、絶望していた。そうだ、ここに来てか ら嫌なことばっかりだ。どうして、こんなことになっちゃったんだろう。私は何も悪くないのに。
 突きつけられた現実の重さに膝を折り、顔を伏せる。手の緊張が緩み、レフェルを落っことしてしまったけど、拾う気にもなれなかった。それをただ公然と眺 めているクラウン。
 今になって気づいた。クラウンが奪いに来たのはレフェルではなく、私自身の希望だった。レフェルだけを奪っても、私さえいれば賭けは成立する。でも、レ フェルがいたところで肝心な私がいなければ、レフェルはチップ一枚賭けることが出来ない。
 そんな心の隙をクラウンが突かないわけがなかった。彼は絶妙なタイミングで私に手を差し伸べて、耳元にそっと囁く。
「ひとつだけ、あの二人を助ける方法があります。あなたが私どもの言うところについてきてくださるだけでいい。あなた一人が犠牲になることで、お二人の命 を救済しましょう。簡単なことです、ただ付いて来て下さるだけでいい」
 まさしく悪魔の囁きだった。氷のように冷たい指先は私の心の隙間にすっと忍び込み、容易く心の芯を折りに来る。二人が助かるなら、連れて行かれることも 惜しくないかもしれない。二人には会えなくなるけど、死ぬわけじゃない。また会える。
 私がクラウンに身を委ねようと思った刹那、カジノ全体に響き渡るような大声がこだました。
「グミ、諦めるな! 悪魔の囁きに耳を貸すな! この勝負、勝つのは我ら……負けるのはカジノだ!」
 至近距離で鼓膜が破れるほどの声が、私の胸を打つ。私の心が折れるすんでのところでレフェルが私を助けてくれた。私は急いでレフェルを拾い上げ、レフェ ルを守るようにしてクラウンを睨みつける。
「嫌よ。変態、誘拐犯」
 クラウンは一瞬面食らったような顔をし、片目だけでレフェルを睨む。本当に危ないところだったけど、ギリギリでクラウンの手中に落ちずに済んだ。クラウ ンは消え入りそうな声で呪詛の言葉を吐き、レフェルに侮蔑のまなざしを送った。
「悪魔はどっちだ。グミ、あの悪魔もお前もひとつ大きな見落としをしてる。アンノーンとかいう化け物がやられるという可能性を。倒せないモンスターなんて いるはずがない。それに、忘れたのか? あの二人の強さを!」
 ちょっとバカだけど二丁拳銃を扱わせたら天下一品のシュウ、どんなときでも圧倒的な強さで私を守ってくれたユアさん。そうだ、二人は私なんかよりもずっ と強い。きっとそのアンノーンとかいうヤツだって倒してくれるに違いない。それにコウさんだって、シュウと同じくらい強い。そう簡単にやられるはずない。
「クラウン、あんたの思い通りにはならない。私”たち”が勝つわ」
 クラウンの笑みは消えうせ、ただただレフェルの存在を疎ましそうに見ていた。クラウンははぁーっと大きなため息をつき、ふと私の目を見る。
「そうですか、仲間が惨殺されるところを見なくて済む最後のチャンスでしたのに、残念です。運命は変えられない、悲劇は避けられないってこと……あなたが 一番ご存知だと思っていたのですが。運命も人の心も思い通りにならないものです。それでは御武運を」
 クラウンは皮肉を言った後、最後に深く礼をすると身を翻して雑踏の中に消えていった。
 クラウンがいなくなったことを確認すると、私はレフェルをさっきとは別の意味でぎゅっと抱く。ごつごつとした飾りの部分が少し痛かったけど、そんなこと よりもレフェルに感謝したい気持ちでいっぱいだった。
「ごめん、レフェルがいなかったら危なかったかも。あんな大声で叫んでくれて、ありがとう」
「気にするな。当然のことをしたまでだ。お前は我の主人なのだからな」
 私はすーっと流れてきた涙を拭いて、もう一度お礼を言う。認めたくないけど、嬉し泣きだった。
 レフェルがいてくれて本当によかったと思う。そして今、二人の命の保障がなくなったからには、私たちが命を賭して救い出さなきゃいけない。
 気づけば、レフェルの大声のせいで私たちは他の客の脚光の的だった。少し恥ずかしかったけど、無視してゴードンさんのカウンターに並ぶ。長蛇の列はゴー ドンさんと若い販売員さんの卓越した技で上手く捌けているようだった。
 ようやく私の順番が来る。さっきの私の様子を見て心を痛めたのか、哀れむような眼差しで私を覗き込んでくるゴードンさん。
「つらかったろう。それでも、ここで勝負しようというグミちゃん。強い子じゃ。用紙はさっきのを使うのかの? それとも思い直して、新しいのを使うのかの?」
 さっきのやつは本物の対戦表だったんだ。てっきり試し書きみたいなものかと思ってた。
 私はおじいさんの問いに首を振って、さっきもらったのを使うと言った。レフェルと一緒に決めた大切な対戦表だ。これが最善、新しい紙を貰ったとしても同 じように埋めるだろう。
「それじゃ、賭け金の1Mじゃが、チップでいいかね?」
 私は大きく頷き、大事に持っていた箱を取り出す。そして、その中でひときわ大きな一枚を取り出し、見つめる。銀鏡の中には泣いたせいで少し目が赤くなっ た私が映っていた。これを失ったら、どれだけチップがあっても命を失う。文字通り、命のチップだ。
 躊躇うことなく、それをゴードンさんの前に差し出す。驚いたのはゴードンさんの方だった。
「ぐ、グミちゃん……気は確かかの? 他にも1Mチップが二枚もあるじゃないか。どうして、そんな命を賭けるような真似を……」
「仲間二人が命を賭けてるんです。だから、私も命を賭けます。それからひとつお願いがあります。もし、私が負けちゃったらその1Mチップ二枚で対戦者の シュウとユアに『許可証』を出してください」
 有無を言わさぬ強い口調で言った。ゴードンさんは低く唸り、悩んでいたようだったけど、最後には折れて鏡のように輝くそれを受け取ってくれた。
「……一度賭けると決めたなら、それを断ることはできんのう。その二人のことは任せておくがよい。グッドラック、頑張るのじゃぞ」
 おじいさんは親指を立てて、にっと微笑む。私もそれに答えるべく、できるだけ孫娘になりきって答えた。
「ありがとう。また絶対に会いに来るからね、おじいちゃん」
 ゴードンさんは呆気に取られた様な表情を取り、一瞬遅れて頭を撫でてくれた。私はもう一度小さくお辞儀して、そのままさっきはこっそり入ったコロシアム へと足を運ぶ。こんなところでもいい人と知り合えてよかった。レフェルがいてくれてよかった。
 もし、これで私が負けてしまったとしても、同じこと。私は……私たちは、運命を共にする。
*
 一方その頃、俺たちはというと……係員による点呼が掛かり、それぞれコロシアムに向かう廊下へと連れられていた。サベージは足を引きずって歩いている が、係員はそんなことには全く意を解さず、さっさと歩くようにと引っ張る。
 そんな惨状の中、サベージは俺に賛同してくれた仲間にいくつかのことを告げた。
「何もないように見えるが、あの門には記憶を操作するなんかがある。俺たちを戦うように仕向ける何かだ。いいか、目的を忘れるな。お前たちはここを脱出す る。その前にまず邪魔なモンスターの掃討、あとは大物の攻撃を上手く利用するんだ。しくじったら終わりだ……頑張れよ」
「サベージ、手前もな。お前を見殺しにする気はないぜ」
 サベージはへへっと笑い、俺の頭をバンバン叩いた。
「当たりめえよ。さっさと脱出して仲間のクレリックとやらを呼んできてくれ。おっと、そういやそのグミって子は可愛いのか?」
「背は低くて童顔だけど、俺のひとつ下だ。ユアには敵わないが、可愛い」
 それを聞いていたユアが複雑な顔をするが、まぁこれもその記憶を操作するなんかで忘れてくれるだろう。俺たちが忘れちゃいけないのは脱出するという意思 だけだからな。
 俺の顔を見ていたサベージは、いきなり廊下に響く大きな声で笑う。
「こんないい子がいてもロリコンじゃ可哀相じゃねえか」
「ロリコンじゃねえよ! ひとつ下だって言ったろ!!」
 それでもサベージの笑いは止まらない。それを聞いていたユアやキール、その他大勢も笑いを堪えてるのが見て取れた。くそっ、俺はロリコンじゃない……ロ リコンじゃないはずだ。
 急に改まったサベージが、俺だけに聞こえるように耳元で一言言った。
「こんなバカ話出来んのもこれが最後かもしれないしな。お前、死んでもその二人を守れよ。女を守るのが男の役目だ」
「あたぼうよ……」
 お前と会ったのが居酒屋だったら、ダチになれたろうなとサベージがこぼし、軽く俺の肩を小突く。俺もサベージが痛くない程度に軽く小突いてやった。
 一度通った光のゲートが見えてくる。俺は忘れない。どんなことがあろうと胸に刻む。脱出するという意思、ここであったこと、このおっさんがいたことも。
続く
第19章 ぐみ9に戻る