わからないものに怯える私。それが何で恐ろしいのか、何だかわからないから怖いの
か……それすらもわからない。正体不明のアンノーン。
怖かったから、怖かったから何も出来なかった。何も出来なかったから、怖かった。もし、私に絶対的な強さで、何も失うものがなかったとしたら……それで
も、私の怖いものはなくならないだろう。
私は怖がりだから。おばけが怖い、暗闇が怖い、それを照らし出す炎が怖い、復讐したいほどに憎んでいるあの竜だって、本当は怖い。仲間がいなくなっちゃ
うのだって怖い。怖いものだらけだ。
でも、知ってる。私が一番怖いのは、私が死んでしまうことだ。私が私でなくなってしまうのが怖い。何だかわからないものや、怖いものによって私の意識が
消し去られてしまうことが何よりも怖い。
そんな恐ろしいモノが、今回は確実に敵として現れることがわかっている。でも、実際は私の敵じゃない。私の仲間たちの敵だ。
シュウが、ユアさんが消されてしまうかも知れない。いなくなってしまうかもしれない。二人がいなくなったら、私がどうなってしまうのか想像もしたくな
い。死んでしまうよりもつらいのかもしれない。
二人がいなくなっても、私が死ぬことはないのに。
でも、自信があった。そんなことがあれば、私の心は壊れる。
死んでしまった二人は、残された私がどうなってしまうのか見ることは出来るのだろうか。
「……おい、グミ。グミ、生きてるか?」
「え……?」
誰かの声がして、我に返る。すぐ傍でレフェルの声がしていた。
「こっちの相談は終わった。話は聞いていたのか?」
「あ、うん」
話の内容はまるで耳に入っていなかった。でも、レフェルの呼び声で陰気な連想を断ち切ることが出来た。あれ以上考えていたら、頭の中で無限にループして
い
た。恐怖で叫びだしていたかもしれない。
怖いものに怯えてるだけじゃ、何も出来ない。そう、わかっていたはずなのに。
「アンノーンについては何もわからなかったが、ゴードンの粋な計らいで、コロシアムを見学させてくれることになった。もちろん、観客席のほうだが」
もちろん、二人に会うことが出来ないってことはわかってる。でも、二人が居たところのすぐ近くまで行くことが出来る。それだけで嬉しかった。
私は二つ返事でレフェルに同意し、レフェルを抱えて立ち上がる。しかし、腕の内側からの声はまだ続いていた。
「……それで、すごく言いにくい話なんだが、情報開示と見学での交渉でグミにひとつ頼みがある」
「ん、なに?」
そういえば、さっきあのおじいさんと何かコソコソ話してたっけ。何の話だろう。
すぐ聞き返したけど、レフェルはうーんとかむーんとか言い淀んでる。
「ふぉっふぉっふぉ」
おじいさんがやたら嬉しそうにしているのは何でだろう。さっきの交渉というもの後からというものの、ほとんど何も話してくれなかったゴードンさんが、急
に自分から情報を明かしてくれたり、おまけしてくれたり。
今考えると怪し過ぎる。何か裏があったに違いない。
さっきまで困った顔でウンウン唸っていた、レフェルがついに観念したかのように口を開く。
「仕方ない。許してくれとは言わない。実はお前を交渉材料として使った。その条件は、ゴードンに抱きついて『おじいちゃんだいすき』と言う事だ」
「勝手にそんな約束するなッ!」
約束の内容が聞こえたと同時にレフェルを怒鳴りつける。
しかし、滅茶苦茶な約束だったけど、仕方ないと思い始めてる自分がいた。何しろ情報はもう全部貰っちゃってるし、ここで嫌だと断れば、レフェルが行きた
がってる観覧席に行けなくなるかもしれない。
歳はとっているけれど、ゴードンさんはひょろりとかなり背が高い。
ただでさえ、背の低い私がおじいさんの顔を見るためには相当見上げなければならないし、抱きつくとなるとそれはもうジャンプして抱きつかないと届かない
だろう。
「でも、こっちだけじゃ悪いものね。もう、この手は何回か使ったわけだし……やるわよ」
「すまない。あの変態爺さんを満足させてやってくれ」
私は無言で頷き、大きく深呼吸する。もし、これでおじいさんが満足してくれなかったら、情報が不足するかもしれない。うん、二人のためなんだ。
覚悟を決めて、自分を創る。目の前にいるのは今日会ったばかりの知らないお爺さんじゃなくて、もう何年かわかんないけどしばらく会ってなかった大好きな
おじいちゃんなんだ。特にシチュエーションからすると、何かとても欲しかったものを買ってくれた的な心境なのよと自分に言い聞かせる。
後は実行あるのみだ。一瞬だけレフェルを尻目で睨み、自分の持てる最高の笑顔を作る。それだけで、ゴードンさん……じゃなかった、おじいちゃんは嬉しそ
うに微笑む。よく見ると、抱きしめやすいようにしゃがみ込み、両腕を前に突き出している。いかにも感動の再会と言えば、わかりやすいと思う。
「おじいちゃん、だいすき!」
「おじいちゃん」の辺りで軽く小走りし、身を投げ出すようにしておじいちゃんにぎゅっと抱きつく。潤ませた瞳で優しくおじいちゃんを見上げ、意外にも屈
強な胸に頬をすり寄せる。そして、止めとばかりに何でも買ってくれる魔法の呪文を唱えた。
その効果はというと……もう、これは孫を持つ年代にならないとわからないかもしれない。深く刻まれたシワは笑顔の形にゆがみ、なんというか恍惚とした表
情だった。
「グミちゃんのような孫娘がいてくれたら、わしゃ明日にでもあの世に旅出せそうじゃわい」
おじいちゃんはそういい残すと、最後にぎゅっと強く抱きしめて、開放してくれた。明日逝ってもいいなんて縁起でもないけれど、それほど嬉しかったという
意味なんだと勝手に解釈する。
今度は演技で作った顔じゃなく、素直な心でお辞儀する。
「いろいろとありがとうございました。とても助かりました」
「いいんじゃよ。また、なにか教えて欲しいことがあれば、なんでも聞きにくるといい。そっちには話を通しておいたから、気をつけて行って来るのじゃよ」
おじいさんは笑顔で手を振りながら、私を送り出してくれる。どこか、村を出たときの事を思い出させてくれた。私はレフェルを引っつかみ、指示された方向
へと歩き出す。
「また何かあったら頼む」
手にしたレフェルがゴードンさんに礼を言う。でも、お爺さんはお前の言うことは聞かんとばかりにそっぽを向き、しっしっと片手で払うような仕草をした。
レフェルの言うことは聞く気がないという意味なんだろう。レフェルはそれ以上何も言わず、無言で観客席に行くように促した。
*
コロシアム観客席の入り口はというと、受付から歩いてすぐのところだった。
一応飾りのようにボディーガードの人が立っていたけど、私が用件を伝えると目線の移動だけで入れと言った。警備員は左右に一歩ずつ動き、人が一人通れる
くらいの隙間が開く。
「通っていいんだよね?」
確証がなくて、一応聞いてみたものの、その答えは完全な無視だった。きっと、私が聞いたことも今から立ち入り禁止の場所に入ろうとしていることも、完全
に無視するつもりらしい。
あまりに無粋な態度にちょっとイラっと来たけれど、一応警備員の仕事なのだからそうするしかないのだろう。でも、その仕事を無視してまで、きっとこの二
人もあのおじいさんに弱みを握られているのだ。
「通りますよー」
私は二人の隙間を縫うように通り、観覧席へと入る。だだっ広い観客席は、大きなドーム上になっており、中心のコロシアムに向かってずらーっと席が並んで
いる。幾つか通路はあるものの、それ以外はほとんど椅子だ。
「椅子ばっかりね」
歩いても、歩いても、とにかく椅子だらけだ。椅子にはそれぞれ記号と番号がふられている。そして、どの席に座っても真ん中の戦場がよく見えるように、階
段状に椅子が設置されている。
「グミ、後ろを見てみろ」
階段を大分下っていったところで、レフェルがそう言ったので振り返ってみる。後ろ、それともう少し上を見る。見えたのは、ついさっき見せてもらった資料
と同じような図形が並んだ電光掲示板。
綺麗に整列した○に、名前はまだ記入されていない。準備中だからなのだろう。唯一、既に表示されていたのは、10:00という時間だけだった。
「一番前に行ってくれ。それが一番確認したいことなんだ」
「うん、わかった。でも、どうして一番前に?」
歩きながら質問すると、レフェルは行ってみたらわかるとだけ言って、一番前の席へと急がせた。一番前に行ったところで、今は何も行われていない。
歩きながら考える。そういえば、激しい戦いが行われたとして、一番前の席って危なくないのだろうか。モンスターは上ってこないように制御されているとし
ても、人の攻撃は危ないんじゃないだろうか。
例えばシュウが滅茶苦茶な方向に拳銃をぶっ放したとして、その跳弾が当たらないとも限らない。あのバカのことだから、ヤケになってボムを観客席に放り込
んだりするのかもしれない。そんなことしたら、何人もの人が爆死してしまうだろう。
「痛っ!!」
なにかが思い切り額にぶつかった。真っ直ぐ歩いてたはずが、いつの間にか壁の方に歩いていたのかと、痛む額をさすりながら見てみると、壁も何も存在しな
かった。しかも、道は逸れていなかったし、一番前の席がある通路まで真っ直ぐ降りてきていた。
「今ぶつかったそれだ。触ってみろ」
「え、なにこれ?」
手を伸ばしてみると、さっき頭をぶつけた位置に見えない何かがあった。ノックしたり、撫でてみたりすると本当に何もない空間のような場所に、透明な壁が
ある。手触りはつるつるしていて、叩いてもびくともしないほど丈夫だ。
「なんで、こんなものが……あっ!」
なるほど、これがないと観客の人に危害が及ぶかもしれないからか。でも、戦ってるのは近くで見たい。だから透明な壁が必要になる。
で、これがどうかしたのだろうか。新たにわいた疑問の答えをレフェルが衝撃的な形で口にする。
「ちょっと、我を使ってこの壁を殴ってくれ」
いきなり観客席を守る壁を壊そうとするなんて、ちょっとで済ますことじゃない。さっきのおじいさんとのやり取りでレフェルまで頭が沸いたのかもしれな
い。
「え、だめでしょ。そんなことしたら、傷ついたりするかも知れないし」
私の至極真っ当な返事に対してレフェルはというと、平気な顔して言った。
「グミが殴った程度で壊れる壁なら今頃穴だらけなはずだ。気にせず思いっきり殴るといい」
確かに私の一撃なんかよりも、鉄砲の一発のほうがずっと貫通力があるはずだ。でも、全体を見回したところ、大きな穴もなければ細かい傷もない。どこまで
も透き通った壁が、コロシアムを覆うようにして立てられている。
まぁ、レフェルもそう言うし、やってみよう。最悪ゴードンさんに謝れば許してもらえるだろう。レフェルだって、壊れないことを前提にやれって言ってるみ
たいだし。
私は村での修練を思い出しながら、両手でレフェルを握り、構える。壁は私に向かってほぼ垂直に立っていて、円形のコロシアムに沿って湾曲している。野球
のように振りぬいてもよかったけど、指からすっぽ抜けてレフェルが飛んでいくと面倒なので、オーソドックスに斜め上から袈裟で殴ることにした。
せーのと両腕に力を入れて、にっくきクラウンの面を瞳に写しながら、レフェルの鉄球を壁へ全力で叩きつける!
透明の壁はガラスのようにヒビが入り、その亀裂を広げ……たりすることは全然なく、ものすごく硬いものを叩いたときのように両手が痺れてしまった。壁を
壊して衝撃を逃がすところを、壊せなかったので全部私に跳ね返ってきた。
もちろん、壁には傷ひとつなく、ものすごい勢いで殴ったにもかかわらず、音もしなかった。絶妙な角度で叩きつけられたレフェルだったけど、壁を破壊する
どころか、私に落とされて空しく転がっている。
「ふむ、やはりこうなるか。感触からしてそこまで厚くないようだが、恐らくこれは魔法壁だな。グミのマジックシールドと似ている。誰かが継続的に発動して
いるか、透明な壁に強力な魔法で加工を施したかのどちらかだな」
転がったままのレフェルがなにやらブツブツと考察をしてる。もしかしてわざわざこの堅さを確かめるために、私にあんなことさせたのだろうか。だとした
ら、かなり腹が立つ。
私はレフェルを拾い上げ、じーっと疑惑のまなざしを送る。レフェルも私が言いたいことをすぐに理解したらしく、弁解してきた。
「手荒な真似をさせて悪かった。だが、これも必要なことなのだ。それにここに来たのにはもうひとつ理由がある」
「なによ。どうでもいい理由だったら、砲丸投げの要領で投げるよ」
その脅し文句を聞いて、多少慌てた様子でレフェルはさっきの対戦者リストを広げるように言った。不機嫌顔で言われたページを開くと、何か書くものを出せ
と言ってきたので、カバンの隅に転がっていたちびた鉛筆を取り出す。
「ここに来たのは他でもない。クラウンの目が届かない場所に行くためだ。やつは自分自身だけでなく、他のディーラーや客に紛れた仲間で我々を監視してい
る。しかし、内部資料で見たとおり、ここだけはカジノと隔離された場所であり、イカサマ防止のためにカメラはない。しかも、開始前で無人である今は人の目
もない」
レフェルはそこまで計算して、ここに来てたんだ。なんとなく試合前で暇だったからとか、気になったからじゃなく。そのことに私は少し感心して、レフェル
がこれからやることに対して全面的に協力することにした。
「そんな、クラウンがいないとこで何するつもりなの?」
レフェルは周囲に目をやり、誰も人がいないのを確認する。誰もいないのはわかってることだったけど、それでも警戒して小さな声で言った。
「あらかじめ、生存者を決定する。賭けるわけじゃない、我々が勝負の結果を操作する」
「な、そんなどうやって!」
レフェルの言ってることの意味はわかったけど、実際にそれをするための方法は私に全く明かされていなかった。でも、レフェルの中ではあらゆる情報とそれ
を可能にするための手段が用意されているらしい。せっかく誰もいないところに来たのだから、教えて欲しかった。
「方法はまだ言えない。だが、グミ。お前なら、その場で考えるよりも先に体が動くはずだ。さっきも言っただろう?
知って身体を強張らせるよりも、知らずにリラックスしていた方がいい。動けない我に代わっての切り札がお前なのだ」
「わ、私だって……もう、わかったわよ。それで、誰が勝つかなんて、本当にわかるの?」
私が切り札とか、レフェルにそこまで言われたら、さすがに少しは譲歩する気になる。方法は教えられないけど、レフェルには勝つための道筋が見えている。
なら、レフェルが私を信じてくれているように、私もレフェルを信じてあげなくちゃいけない。
「グミ、勝つのは我らだ。実際に戦う戦士は最後まで意識を保っているだけでいい」
「どういうこと?」
「グミが生かしておきたい者だけを生かし、後はすべて黒で塗りつぶせばいい。それだけのことだ」
答えになってない。私が生かしておきたい人は人間側の人全員だ。誰一人として、こんなところで死ぬことなんて望んでないだろう。
私はモンスター側の○をほとんど黒で塗りつぶし、悩んだ末にアンノーンとフェアリーの○だけ残してレフェルに見せる。それを見て、返ってきたレフェルの
答えが私を酷く動揺させることになる。
「グミ、お前はモンスターを生かしておきたいのか?」
「そんなわけないでしょ! でも、アンノーンはさっきおじいさんがすごく強い魔物だって言ってたし、ふぇありーさんは友達だもん……」
しかし、それに対するレフェルの言葉も無情なものだった。
「そうか、グミに全責任を押し付けるようなことを言って悪かった。前言撤回、我が決めよう。まず、アンノーンとフェアリーを塗りつぶすんだ」
私はアンノーンの○を倒せるかどうか半信半疑ながらも塗りつぶし、フェアリーの○まで鉛筆を持っていき、視線を落とす。もし、これがふぇありーさんだと
したら、とても塗りつぶせなかった。しかも、あの注意書き……十中八九あのふぇありーさんだと思う。
ためらっている私を見て、レフェルは私に優しく声をかける。
「まだ、あのフェアリーと決まったわけじゃない。それに塗りつぶす=死じゃない。もし、あのフェアリーだったとしても、気絶させればいいだけだ。ユアが一
秒でやってくれるだろう」
「……うん」
気絶してもらうだけ。その後で絶対助けるから。
私はそう自分に言い聞かせて、モンスター側の○をすべて黒で塗りつぶす。
「次に人間側だが、多すぎる。堕落組は全員黒だ」
「だって、この人たちだって生きてるんだよ!? 死んじゃったら……」
「可哀相か? だが、そんな同情でこいつらをいちいち生存させていては、100%勝てない。第一、戦闘中に失神でもされれば、それで計画はご破算だ」
冷徹な判断を下すレフェルに動揺して、声を震わせる。レフェルの言っている事は、こうだ。こいつらは死ぬ。死んで当然。
「中には死者も出るだろう。さっきも見たような光景はきっと繰り返される。闘争の中じゃ、あれが当たり前の光景なんだ。続いてSとTも塗りつぶせ」
「だって、それじゃコウくんが!」
堕落組の人たちにすら黒をつけられないまま、コウくんを殺せと言うレフェルに対して悲鳴のような声を上げる。いくら、気絶で済むといえども、出来ること
と出来ないことがあった。
しかし、レフェルは非情を貫くつもりのようだ。いつも重厚なレフェルの声が、いつもよりもずっと冷たく剣のように感じられる。
「まだ、あのコウだとわかったわけじゃない。それに、はっきり言おう。ヤツは強いが、死なないとも限らない。生きているものを殺したり気絶させることは出
来る。しかし、死んだ人間は生き返らない。○を塗りつぶす鉛筆はある。だが、それを無かったことに出来る消しゴムは存在しないんだ」
ふと見た鉛筆の後ろには、元々付いていた消しゴムの部分は綺麗に使い切られ、金具だけが残っていた。死んだものを蘇らせることは出来ない。だから、レ
フェルはほとんどを黒にしておけというのだ。
私は胸が締め付けられる思いでレフェルが言った六人の○を黒で塗りつぶす。黒=死ではないと頭では理解しつつも、人の生き死にを左右しているような気に
囚われて、お世辞にも楽しい気分ではなかった。
「サベージ、キールを黒に」
名前の知らない二人、でもこの二人も生きて生活している。守りたい家族だっているかもしれない。私は歯を食いしばって、この二人を黒に染める。
リストに18の●が並んだ中、ついに残ったのはシュウとユアさんの二人になった。
「ねぇ、さすがにこの二人は白のままでいいよね?」
この二人を黒にするくらいなら、私はこのリストを灰にしてでも、それをさせない。私の強い意志を目にしてか、初めからそのつもりだったのか、ここに来て
から初めて私に肯定的な意見を言ってくれた。
「ああ、その二人は白だ。この二人は何があっても生きて、闘ってもらわなければならない。それに……」
なぜかレフェルはほんの少し間を空けて、言った。
「その二人のうち、片方でも欠ければ、結果的に我らの敗北だ。どれだけの金を手に入れようと、それによって命を落として何になる?」
レフェルは私の苦悩と、今は離れ離れになってしまったかけがえのない仲間のことをすべて見抜いていた。そして、それだけじゃない。レフェルは私の敗北と
は言わず、我らの敗北と言った。
……二人は、私だけじゃなく、レフェルにとっても失えない仲間なのだ。きっと、それはシュウやユアさんにとっても同じはず。誰も欠けることなく、勝負に
勝つ。18の●を照らす、わずか二つの星。
図らずとも初めから決まっていたことだったんだ。全てはこの二人と再会して、また一緒に旅できるようになること。そのためだけに。
続く