in「リス亭」
「おばちゃん! おかわり!!」
「あんたよく食うねぇ…これで10杯目だよ」
「3日も何も食ってなかったんだから、そんぐらい余裕だよ。それにここの飯美味いし」
どうしてこんなことになったんだろう…あいつ、いったいどれだけ食うのよ! それにちゃんとお金持ってるのかしら?
「おかわりっ!」まだ食うのかい…
 今私の前で11杯目のご飯を平らげてるのは、私の友達でも兄弟でもかr…いやこれは余計か…でもない。ただ少し前に、私がチンピラに絡まれたときに、 勝手に助けに現れて、そんでもって勝手に倒れた青年である。私は被弾したのかと思ったけれど、ただおなかがすいて倒れただけだったみたい。人騒がせなや つ!
「ふーようやく腹いっぱいだ。ごちそうさまでした」
青年は手を合わせて軽く会釈する。
「満足した?」
「もう大満足だよ。もう3日食わなくてもいけるな」
「さっきは助けてくれてありがとう。でんp…ゲフン…君、名前は?」
「俺の名前は…・とりあえず皆からはシュウって呼ばれてる。ホントの名前は知らないけど」
シュウ…ありきたりな名前だけど、彼のイメージにはぴったりだった。なんか頭とかね。
「じゃあ私はこれで…行くから頑張ってね!」
こんな危ないやつとはさっさとおさらばしといたほうがよさそう。それをシュウが呼び止める。
「ちょ…ちょっと待ってくれ!実はメルが…」
おい、ま さ か ! ?
「あんた、メルも無いのにそんなに食べちゃったの? …ご愁傷様。皿洗いでもして稼いでねー。じゃあ私は…」
まさかとは思ったけど、女の子にお金払わそうなんて何てやつだ…。シュウは泣きそうな顔になって、私の足にすがる。
「お願い…払ってくれとは言わない。貸してくれないか? メルが貯まるまでボディーガードでも何でもするからさ。ね、お願い!」
ボディーガードか…こいつ結構強いし使えるかも…う〜んでもこいつちょっとおかしいし…。こんなときこそレフェルに聞いてみようか。
(レフェル…こいつにボディーガードしてもらったほうが良いかな? アレの性格が性格だけに悩んでるんだけど…)
(あいつは確かに腕は立つが…我としてはどちらでもいい。そもそもお前が危なくなるような敵はそんなにいないと思うがな…まぁ例外もある。ポーラはいつも 一匹狼だったが、あるギルドに入団してから前よりも、もっと強くなった。結束の力というやつかもしれないな。)
要約してみるとレフェルはどちらかというと賛成のようだ。まぁ初めての大陸だし、ここで生まれ育ったあいつに色々教えてもらうのも良いかもしれない。
「いいわ…ちゃんと私のこと守ってよね。それに私…ここのこと良く知らないから…」
私が「色々教えてね」と言おうとした所を遮る。
「ふぅー…何があってもお前のことを守ってみせる。命に代えてもな。…そういえば名前聞いてなかったな」
「グミよ」
「グミか。よろしくなグミ!」
「メル返し終わるまでだからね。しっかり働いてよねっ!」
それを聞いたレフェルがはぁとため息をつく。
「がってん承知の助! じゃ早速出発だ」
もう外は真っ暗だけど…こいつなら行きかねない!
「ね…今日はもう暗いから明日にしない? 夜はモンスターが凶暴化するとか聞いたことあるし…」
「ぁ…そう。じゃ隣の宿屋で休んで明日出発しよう」
何かニヤニヤしている…やましい考えでもあるんじゃないのかこいつ…
「あなたメル無いんでしょ。野宿しなさい。野宿!」
「そうだった…寝床探してきます。明日の朝ホテルのロビーで落ち合おう」
「逃げるんじゃないわよ! もし逃げたりしたら…わかってるわね」
「わかってます…。じゃ明日!」
シュウは一言そう言うと、寝床を探しに月明かりの下飛び出していった。本当に逃げないんだろうなあいつ…。と思いつつ、あいつの食事代を肩代わりするのを 忘れてたので払いに行く。
「お会計いくらですかー?」
「10kになりまーす」
10kだって…? 冒険初日からこれとは…この先が心配でしょうがない…
続く
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