ここはビクトリア学園。
私が通っている学校。
この学校では一つの名物がある。
それは・・・
『先生と生徒の鬼ごっこ☆』
誰がつけたか知らないけど、始めて聞いたときはつい笑ってしまった。
だって最後の☆とか、笑いを誘ってるとしか思えなかったんだもの・・・
でも、この鬼ごっこ、予想以上に凄かった。
そして、“あいつ”に出会ったのもこれがきっかけともいえた。
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その日私は、パンフレットを手に廊下をうろついていた。
『え〜っと!1-B・・・』
その時、突然遠くからドドド・・・と走る音が聞こえた。
『え?!』
それはだんだん近くなる。
そして・・・!!
『まぁちやがれぇぇぇぇぇぇ!!』
『待てといわれて待つ馬鹿はいない!!』
まず最初に見えたのは、2年生くらいの人。
そして次に走ってきたのは・・・
『ちゃんと再テスト受けんかぁぁぁぁぁぁぁ!!』
今ではよく知るサイン先生。
そして先輩が曲がり角に差し掛かったとき、“あいつ”が出てきた。
“あいつ”は、あくびをしながらとまり、ふと横を見て驚いていた。(本人は驚いてない!!びっくりしただけだ!!といっているけど、どっちも似たようなも
のだよね・・・)
そのまま、勢いをつけた走りは止まりそうになかった。
ぶつかる!!
そう思って私が目を見開くと、先輩はそのまま跳躍して“あいつ”の髪のとんがってる部分を蹴るとそのまま走っていった。
“あいつ”はそのまま倒れる。
『待たんか!』
『むげ』
サイン先生の足が、“あいつ”の腹を思い切り踏む。
『・・・ん?いたのか?』
『いたのかじゃねぇ!!すっげぇ痛かったんだからな・・・』
『でもお前丈夫なんだから保健室に行く必要ないだろ?』
最初それを聞いたときはそれはちょっと・・・と思ったけれど、後で“あいつ”を知っていくうちに納得した。
『それはねぇだろ・・・保健室に行くことを主張する!!』
その後暫く言い合っていたが、珍しく―珍しいということは後で知ったんだけど―サイン先生が負けた。
『ったくしょうがねぇなぁ・・・じゃあ〜・・・そこの3年生、ちょっと悪いけどこいつ保健室に連れて行ってくれないか?』
『へ?私ですか?』
サイン先生に言われたのは、トパーズの髪にシルバーブロンドの綺麗な人。
『それと〜・・・あ、そうそうそこの一年生もよろしく。俺はさっき逃げていった奴を探しに行くんで。』
そしてそのままサイン先生は走っていってしまった。
『え〜っとひとまずどうすれば・・・』
『えっと・・・シュウさんはどこか痛いところとかありませんか?』
『え?俺のこと知ってるの?』
“あいつ”は目を丸くして驚いていた。
『ええ・・・割と有名人でしたので・・・』
『まぁ当然だな。』
なんか言い憎そうな顔をしていた。
まぁ私も噂いくつか聞いたけどそんなにいいものなかったような・・・
『ところで二人の名前は?』
『あ、私ユアです』
『あ、私グミ』
『そ、よろしくな!!俺はシュウ!!』
これが最初に話した内容だった。
それからなんとなく仲良くなって一緒にいるうちに好きになって・・・
私達は有名な三人組となった。(多分ユアさんとシュウと一緒にいたから・・・)
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「あ〜ねみ・・・」
「どうせ授業中も寝てたんでしょ?」
「ど〜もシゲじいの授業って眠くなるんだよな〜」
「あ、それ分かります。」
「え、ユアさんも?」
「私は一応起きてますが・・・眠くてつらいんですよ」
ちなみに今は下校中。
「あ、そうだねぇねぇ明日暇?」
「「え?」」
二人とも不思議そうな声を上げる。
そんなに驚かなくたって・・・
「あのね、チケットもらったんだけど・・・一緒にいかない?」
本当はs・・・恥ずかしくていえない///
「私はいいですよ」
「あ、俺無理」
「へ?」
いつもなら飛びつきそうなのに、どういうわけかシュウは断る。
―ドウシテ?―
「ど、どうして?」
なるべく普通そうな声を出そうとする。
「明日は大事な用があるんだ」
そういったシュウの顔は、どこかいつもと違った。
そのまま分かれ道にでる。
「あ、じゃあな〜」
シュウはそういうとさっさと帰っていってしまった。
「・・・女二人だけでいってもつまらないかなぁ・・・」
「そうですね・・・」
後に残された私達は呆然とするばかり。
暇になってしまったので、とりあえず近くの墓地へ二人(とペットの犬。名前はレフェル)で散歩することに。
確かに最初は怖いけど、慣れると意外に面白い物とかあって楽しい。
「ユアさんユアさん、小鳥の巣!!」
「雛がいますね。可愛いです」
「本当にね〜」
そんな事を言いながら歩いていると、見覚えのあるとんがりが・・・
ってあれどう見たって・・・
「あ」
「やっぱシュウだ・・・」
なにしてるの?といいかけて言葉を飲み込む。
シュウがいたところの前には、二つの墓があった。
そして、先ほどシュウがおいたらしい花がある。
「お墓参り・・・?」
「そ、親父とナオの妹の墓参り」
そういってシュウが立つ。
用事ってこれだったんだ・・・。
「最近行ってなかったからな。そろそろこないと怒られそうだし」
そういってシュウはにかっと笑った。
「ま、折角あったんだし俺っちにでも遊びに来るか?」
・・・・・へ?
こいつ何言ってるの?
「でも何か悪いですよぅ・・・」
「ま、何かの縁だし」
「では、そうしましょう」
・・・なんか私忘れられている気が・・・
「あ、お茶出しますね」
「え?いやいや悪いって」
「慣れてますから」
なんか気がついたら小さなアパートの一室で座っていた。
え?何これ?
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・」
暫くの間の無言。
そのうちに、シュウが口を開いた。
「な、なぁ、古いアルバムあるんだけど・・・見るか?」
「え?!あ、うんうん」
つい裏声になっちゃった。
シュウが戸棚の上をあさる。
「確かこの辺に〜・・・」
その時、突然シュウが乗っていた土台がぐらつき倒れる。
「へ?きゃっ!!」
気が付くと
目の前にシュウの顔があって―
この態勢・・・
押し倒されてる?!
・・・ってそんなわけないか・・・
「っとわり!」
慌ててどこうとするシュウ。
しかし、それをユアさんがいつの間にか見ていて・・・
「シュウさん・・・不潔――――――!」
シュウの頭の上には大きなたんこぶが一つ出来ていた。
「いてて・・・」
「す、すみません」
「気にするなって・・・」
それにしても本当にいたそう・・・
「もうこんな時間だし、二人とも帰ったほうがいいぜ?」
「え?あ、うん」
そのまま私達は玄関に立つ。
「それじゃあまた学校でな!!」
「あ、シュウ!」
つい、声をかけてしまった。
「え〜っと・・・どうしてシュウのおじさん死んじゃったの?」
この質問はやばかったかな・・・
「アメリカの射撃大会で事故で、な。じゃあな」
そのまま私達は背中を押された。
「じゃあね」
「さようなら」
ユアさんは律儀に頭を下げる。
それにしても今日はシュウの意外な一面とか見れた。
これからももっとシュウのこと知れたらいいな・・・