暗闇の中、一つの影がうごめく。
「こちらコードネーム『復讐の聖職者』。『蒼の銃弾』応答せよ」
無線機から返事が返ってきた。
『あ〜こちら・・・なんだっけ?』
「蒼の銃弾でしょうが!!」
『あ〜わりぃわりぃ』
まったく。せっかく人が最初にかっこよく決めたのに・・・
「取り合えず例の家には入れた〜?」
『おう。警防とかあったけどこのシュウ様にかかれば一発!!』
・・・こいつ、就職間違えたんじゃないの?
「しかも名乗ってるし・・・コードネームの意味ないじゃない!!」
『それを言うなら無線機も意味ないんじゃないの〜?』
そう、ここからシュウの場所まではほんのすぐ近く。
『ま、まってるから早く来いよグミ』
「なに人の名前呼んでるのよ!!」
とりあえずいくかしら・・・

私達はこれでも一流のスパイ。今回はどこかの大富豪が違反行為で儲かってるって聞いて、私達がないみつに調べることになった。

「ここが問題の館の内部か〜・・・けっこう複雑そうね〜。どこから入る?」
「ん〜・・・ここ!!」
なんか嫌に自信満々だけど・・・
「何で?」
「こっちからここにしては珍しい匂いがする!!」
やっぱり!
そのままシュウはずんずん進んでいく。
自分の鼻なんかで勝手に決めないでよね。
まぁでもこんな中じゃ鼻に頼るしかなさそうだけど・・・
「あ、シュウまってよ!!」



出た部屋は、この館の中にしては珍しいみすぼらしい部屋。
そこには、一人の女の人が座っていた。
・・・というか倒れてる?
シュウがその人に近寄っていく。
そして、その顔を覗き込んだ途端目を見開いた。
「いけない!水!水!!」
「水?!えっと・・・あった!!」
慌ててシュウに渡す。
すると、シュウはその女の人に飲ませた。

〜数分後〜

「どうもすみませんでした」
「い、いえ」
倒れていた女の人は、ユアさんという名前らしい。
「でもどうして倒れてたんですか・・・?」
恐る恐る聞いてみる。
と、
「玄関の花瓶を掃除中に割ってしまって・・・3日間食事抜きにされたんですよ。」
「ええ?!」
「こんな美人を食事抜きにするなんて・・・随分酷い奴らだな」
そういいながらシュウは一人でうんうんとうなずく。
「それよりも、なんでこんなところ辞めないんですか?」
「私一応ここの人達の養女なんですよ」
・・・え?
「なるほど、それで家から出られないのね?」
「ええ・・・」
「お!!」
突然シュウが頭の上に電球が光ったかのような反応をした。(たとえ古すぎ)
「(なぁなぁグミ)」
「(何?)」
「(ユアちゃんに協力してもらってさ、あいつらのこと調べ上げて捕まえるってのはどう?うまくすればユアちゃんも自由になって一石二鳥!)」
「(・・・・・)」
シュウがこんなことを考え付くなんて・・・
「(いい作戦だろ?)」
「(そう、ね)」
ひとまずシュウの作戦に賛成して、ユアさんに私達の正体となんでここに侵入したのか話した。
それを聞いたユアさんは少し悩んだけど、協力してくれるといってくれた。
よかった・・・。
でも、シュウなんでこんなに頭が回ったんだろう・・・。



「ふむ、そうか・・・」
「そうそう協力者が一人できた訳」
「それにしても・・・」
局長、サインさんは目を細めた。
「よくそんな頭が回ったな。馬鹿なのに」
その後シュウがなんかごちゃごちゃ言ってたけど、そんなことは耳に入らない。
どうしてあんなことに頭が回ったんだろう。
確かにユアさんは美人で優しくて、スタイルもよかった。
それに比べて私は・・・
「グミ〜?どうしたんだ〜?」
「・・・なんでもない」
ほらまた可愛げのない態度とっちゃった。
「?そうか」
あんたもそこで引き下がるんじゃないよ!!
・・・あ〜もうやだ。
「とりあえずユアさんに会いに行こう」
私はのろのろといった。



「ユアさ〜ん」
「あ、グミさんシュウさん」
ユアさんが笑顔で出迎えてくれた。
「何か証拠品とかあった〜?」
「証拠品かどうかは分からないんですが・・・地下室でへんなものを見つけたんです。」
「その地下室ってどこ?」
とシュウが聞くと、ユアさんは案内してくれた。
「ここです」
・・・
見事に隠してるじゃない!!
それにしても普通に重そうな箪笥を持ち上げるユアさんって・・・
とりあえず私達は中に入ることにした。

「う〜わ〜、見事に証拠が揃ってるな〜」
「本当〜」
「あ、これなんでしょう?」
ユアさんがそういって本を持ち上げる。
カチッ
ウ〜ウ〜ウ〜
・・・
・・・・・
・・・・・・・
警報装置?
「うるさい!!」
シュウがそういって警報装置を撃つ。
って何してるのよ!!
「ちょっとシュウ!!」
慌てて逃げようとするけど、時すでに遅し。
「よくも裏切ってくれたなユア・・・」
「お、義父様・・・」
「そこまで育ててやった恩を忘れたのかぁ!!」
「でも・・・悪いことは悪いことです!!」
「だまれだまれぇ!」
そのまま警備員が襲ってくる。
「いけない!!」
慌てて戦いの態勢になる。



「義父様。おとなしく捕まってください」
「だまれぇ!!警備員!!さっさと起きんかぁ!!」
「見苦しいですよ!」
ユアさんが大きな声で叫ぶ。
「貴方には育ててくださった恩があります。ですからどうか・・・」
「だまれぇ!!」
男が隠し持っていたと見える銃を撃つ。
「!!」
それを見たシュウが、慌てて銃弾に向けて撃った。
そのまま弾がはじかれ、戸棚の上にあったナイフにあたる。
そのままナイフは落ち、男の心臓にささった。
「―!!」
即死、だった。






「ユアさん、これからどうする?」
「あてもないのでとりあえずさまようつもりです」
そういってユアさんは笑った。
「もしよかったら、私達と―」
「迷惑はかけられません!!」
ユアさんはそう言うと、やんわりと笑い
「時々、遊びに来ますね」
といった。
「いつでも来てね!お茶だすから」
「何か困ったことがあったら俺らを呼べよ〜。飛んでいくからな!!」
「ええ。それでは」
ユアさんは頭を下げるとそのまま行ってしまった。
「行ったな」
「うん・・・」
私はついうなだれる。
「・・・さぁ〜てと、次の仕事しようぜ!!」
「うん!!」
―グミさん、シュウさんへ―

―あの後、暫く旅をしていたんですが一人のおばあさんに会いました。―
―その人が困っていたので助けたら、お礼にお婆さんの宝物をくれました。―
―私は遠慮したんですが、どうしてもというのでつい受け取ってしまいました・・・。―
―私、用心棒になろうと思います!!―



―これで二通目の手紙です。―
―用心棒の仕事は結構楽しいです。―
―お金も出来てきたので、今度そちらに遊びに行きたいと思います。―
―面白いお菓子を見つけたので、それをお土産に―



「お、二通目来たか?」
「うん、なんでも用心棒になったらしいよ」
「お〜、結構力持ちだったもんな。」
「それと、今度遊びに来るって!!」
「それならこっちもいいお茶出さないとな!!」



〜fin〜

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