すっかり飾り付けが終わった部屋。壁もテーブルもクリスマスカラー一色で染められて、飾 り文字もキラキラと光っていた。あんなに汚くて廃屋みたいだった、シュウの家が嘘みたい。
レフェルはユアさんのことでからかってから、口を利いてくれないけど…それよりも今は、こっちのほうが大事だ。
「ユアさん、どうかな?」
ユアさんは、真剣な横顔でぐつぐつと煮えているスープに、お玉を入れる。
その後ほんの少しかき混ぜてから言った。
「…いい感じです。味見してみましょうか」
ユアさんがトマト色のスープを小皿に少しだけ注いで、一口だけ飲む。でも、舌が触れた瞬間弾かれたように離してしまった。火傷しちゃったのかもしれない!
心配になった私は急いでユアさんに手をかざす。
「だ、大丈夫? ヒールしたほうがいい?」
ユアさんは小さく舌を出して言った。
「あ、ねこじたなだけです。あついけど、初めてにしては上出来ですよ」
そう言って、薄くスープの張った小皿を渡してくれた。私も火傷しないように気をつけて口をつける。
あっ、全然熱くない。ユアさんはこれで火傷したのか…。でも味は確かにおいしかった。
「ユアさん本当に初めてなの? すごく美味しいよ」
ユアさんは少し照れて笑う。
「きっとこのレシピのおかげです。でも、ありがとう」
「うん。それじゃあとは……」
私はそこまで言って…声に出せなくなる。窓から見える景色は、既に薄暗い。
私がずっと待ってること…古びたドアの隙間から青髪がのぞくことは、まだやってこない。
「グミさん、きっともうすぐ帰ってきますよ」
「うん…」
ユアさんはコンロの火を消して、なべに蓋をする。火を消しても熱が冷めないように。
いくら蓋をしても、時間が経てばいずれ冷めてしまうから…。しばらくはあったかいけど、そのうちごまかせない味になる。冷めたスープは美味しくないもの。
きっと帰ってくる。何度もそう信じようとしたけど…会ってから、何て言ったらいいのかわからないよ。
私はユアさんと一緒に、テーブルを囲んで椅子に座る。
三つある椅子の中、一番壊れそうなのがシュウの椅子。前に私が座ろうとしたら、これだけは座らせないって取り上げられた。見た目はただの壊れかけの椅子で も、シュウにとっては大切なものなんだ。
「グミさん…顔色が悪いです」
「うん…」
ユアさんが私のことを心配してくれてる…。心配しなくちゃいけないのは、こんな時間になっても帰ってこないシュウのことなのに…。
カーテンが開けたままになった窓の外を眺めて見る。けぶるような薄い闇にネオンの明かりが見える。お世辞にもあまり綺麗とはいえないカニングシティだけ ど…今日という日だけはどこか幻想的で、家から出たら二度と戻ってこれない気がした。
窓ガラスに青い影が映ったような気がして、目を凝らすけど…ただのネオンだった。
「シュウ…ぅ」
思わず漏れてしまう嗚咽。目の淵にも涙が溜まってきた…。
涙と一緒に、今までシュウに隠してきた気持ちも溢れ出てきた。
パパやママみたいに失くしたくないよ。私を置いて手の届かないところにいっちゃうのは死んでもいや!
シュウのこと…探しに行こう。
「ユアさん!」「グミさん!」
二人まったく同時に机を叩いて起き上がり、お互いの名前を呼ぶ。気のせいかもしれないけど、ユアさんの瞳も潤んでいた。ユアさんが言いたいこと、聞かなく てもわかる……きっと私と一緒だから。
私はレフェルを、ユアさんはランプを手に取り…
「行こう!」
鍵もかけずに夜の街へ飛び出した。
*
「すいませーん! このあたりで青い髪で角みたいにとがった髪形をした男の子を見ませんでしたか? シュウって名前なんですけど…」
道行く人は頭をかきながら答える。
「そんな今風の若者は見てないなぁ…。ついさっきこの町に着いたんだけどね…」
「そうですか…ありがとうございました」
「力になれなくてごめんよ。じゃあ」
私はぺこりとお辞儀をして、次の人を探す。今まで五人の人に聞いたけど、全員見てないって言われた。人に話しかけるのが苦手なユアさんも必死で声をかける けれども、一向にシュウの情報はなかった。でも、こんなことじゃあきらめないから。
私は大きな声で何度も叫ぶ。
「すいませーん! 青い髪の……」
「…………」
だんだん人通りも少なくなってきて、私たちの声に耳を傾けてくれる人が減ってきた。真っ暗になったら夜盗が出るよと忠告されたりもした。そして、聞いた人 全員がシュウのことは知っていても、今日は見てないと言われた。あたりはどんどん暗くなっていく。
「お、シュウの彼女じゃないか」
「ち、違いますっ!」
私のことをシュウの彼女扱いしたメガネのお兄さん、サインさんが気づかないうちに私の後ろに立っていた。サインさんなら、シュウのこと何か知ってるかも!
私が質問する前に、サインさんが何かを言う。
「まったくシュウの奴はなに考えてるんだ。女の子二人をこんな物騒なところに…しょうがないから俺が家まで送ったげるよ」
私たちを家に送ろうとするサインさんに、ユアさんが聞いた。
「あの、シュウさん見ませんでしたか? 出てってちゃって帰ってこないんです!」
サインさんは一瞬あっけに取られていたけど、すぐに理解して話を聞いてくれた。
でも答えは…みんなと同じだった。
「マッチ売りの少女ならぬ、シュウ探しの少女か…マッチなら買ってやりたいんだが、あいにくシュウは見てないんだ」
「そう…ですか」
シュウの兄貴分のサインさんなら知ってるかもしれないと思ったけど、そう甘くはないみたい。希望の光が見えたと思った後の落胆はなおさら大きかった。
がっくりした私たちを見て、サインさんがとあることを提案する。
「そんな悲しそうな顔すんなよ…参ったな。そうだ! 君ら同じギルドだろ。ライセンスを使えばいいんじゃないか?」
「…ライセンス? あっ!」
ライセンスのメッセージ機能だ! 私はポケットの中から白いカードを取り出し、マイク部分に向かってありったけの声で呼んだ。
「シュウ、どこにいるの!」
メッセージ欄に一文字ずつ私の願いが表示されていく。送信してからの待ち時間ももどかしい…。
ぴろんという効果音とともに、メッセージの履歴が表示される部分に私の発言が表示される。
届いたかな……。
「ぴろんっ」
「んん!? 今なんか音しなかったか?」
私のメッセージが届くのは、同じギルドの人だけ。シュウが近くにいるのかも…。
私はきょろきょろと周りを見渡すけれども、街灯に照らされている部分にシュウの姿はなかった。
あんなにはっきり聞こえたんだから、絶対近くにいるはずなのに。
でもその考えはすぐに間違いだと気づいた。
「グミさん、今の多分わたしのライセンスの音です。見てください」
ユアさんが取り出したカードにはしっかりと私の発言が残っていた。そっか…シュウが近くにいるわけじゃなかったんだ…。
あまりのショックにライセンスを取り落としそうになるのを、サインさんがそっと支えてくれた。
サインさんの手から伝わる温もりも、触れたときの感じも……シュウのものとは違っていた。
「……なんで…こうなっちゃったんだろう」
私の口から漏れる言葉は、どれも後悔の言葉ばかり。シュウのことを怒る感情なんてとっくになくて…溢れだそうとする涙をこらえるで必死だった。もう誰が支 えてくれてるのかもわからないよ。
サインさんの慰めの言葉にも、素直にありがとうって言えない。
「姉さんのライセンスに届いたってことはシュウにも届いてるってことだよ」
「それじゃあどうして返事が来ないの?」
サインさんは、私の自虐的な質問にひるむ。
「あ、それは…多分アイツ、使い方忘れたんだよ。だからそのメッセージ見て帰ってきてる途中かも」
「シュウはバカだから迷子になってんのかも知れないだろ。カニングに十年以上住んでるが…」
「ほ、ほら! なんとなくシュウさんもあんなことがあったから話しづらいのかもしれないですよ」
サインさんとユアさんは、私を元気付けようといろいろ言ってくれたけど、ほとんどは私の心からすっと抜けていった。トゲのように心に残るのはシュウという 三文字だけ。
「まずい、援護…そうだ、ナオを呼ぼう…ってアイツの連絡先知らねえよ…」
「兄貴、こんなところで何してるんだ?」
声がするまで全然気づかなかったけど、いつのまにかナオさんも来ていたらしい。
もう声をだすこともつらくて、それを察したユアさんが私の代わりに何度も繰り返した質問をしてくれた。
「ナオさん、シュウさんのこと見ませんでしたか?」
ナオさんは少しだけ考える素振りを見せたあと、
「昼間、郊外に突っ走ってくのを見たぞ」
と言った…え、見た?
「えっ! ナオさん、シュウのこと見たんですか? それ、どの辺りで…お願い、教えてください!」
我を忘れてナオさんにすがる。ここまで、何人もの人に同じ質問をしたけど…シュウを見たって人はナオさんが初めてだった。ナオさんは突然のことに驚きなが らも答えてくれる。
「お、落ち着いて…声かけようとしたけど、さっさと行っちゃったからどこ行ったかまではわからないよ。でも、電車墓場の辺りで見たよ」
電車墓場…って何だろう。でも、そこにシュウがいたのなら…行かなくちゃ。
サインさんは組んでいた腕を解いて、ナオさんの頭をなでる。
「お手柄だよ、ナオ。それじゃあどうせ予定もない寂しいクリスマスをすごす予定だったんだから、ここはこの恋する乙女に一肌脱ごうじゃないか」
ナオさんはいやいやながら答える。
「…いろいろやることはあったんだけどな…まぁ時間までなら手伝うよ。手分けして探そう」
それを確認したサインさんは、
「わかった。俺らは危険な郊外を探すから、君らはあの青い屋根した入り口の付近を探してみてくれ。じゃな、ヘイスト!」
と言って、次の瞬間にはナオさんと一緒に姿を消していた。置いていかれた私はユアさんを横目で見て言う。
「探そう…!」
「はい」
それを合図に二人一緒に青い屋根めがけて走り出す。走りすぎて何度か転びそうになるところを、ユアさんが助けてくれた。空気の温度もどんどん下がっていっ て、吐く息も真っ白だった。
かじかんだ手をこすりながら、何度も何度もシュウの名前を呼ぶ。
「シュウー!」
「シュウさーん!」
すっかり人のいなくなった路地に私たちの声がむなしく染み込んでいく。返事は返ってこない。
ライセンスに返事が来てないか、確認しても私の発言だけが闇に白く浮かび上がっていた。
「シュウ、どこにいるの…?」
ふとこぼれ落ちた言葉は、誰の耳にも入らないまま儚く消える。気がつくと辺りはすっかり真っ暗になっていた。ユアさんのランプに照らされた白いカードの上 に何かが落ちて…溶けた。
「雪…」
ユアさんの一言で空を見上げる。はらはらと舞い落ちる氷の結晶が、頬に当たって溶けた。
「冷たい…」
おじさんのところに住んでたとき、村に雪が降ったことを思い出す。雪はねの手伝いをさせられるから、雪なんて嫌いだって言ってたけど…幻想的に降り積もる 雪のことを本当は大好きだった。
天からの贈り物…どんなに寒くても、冷たくても触れていたかった。
「シュウ…」
薄く雪が積もった路に、ひざをつく。降り積もる雪と一緒に、押しとどめていたものがだんだんと力を増してきた。
ユアさんが私の隣にしゃがみこんで言った。
「グミさん…もうすっかり夜で、寒くなってきました…。だから、その…家に帰って待ってましょう。きっと戻ってきてくれます…」
「…シュウが見つかるまで帰らない」
「グミさん…」
わがままだってわかってるけど、今戻っても、いくら待っても…シュウは帰ってこない気がした。
いつもふざけてるシュウ。でも、一緒にいてくれた。危ないところを守ってくれた。もしも…もしもシュウが戻ってこなかったら…。
頬についた雫に、温かい涙が混ざる。何度拭いても、次々と流れ出す涙は止まらなかった。
降り積もった雪に落ちた涙が雪を溶かして、降りしきる雪がそれを治す。
「ごめんなさい…私が…」
あの時私が退いてればよかったのに…今頃謝っても仕方ないよね。もう会えないの?
肝心なところは言葉にならない。
その瞬間、後ろから何か布状のものが肩にかかった。黒っぽくて少し薄汚れたコート…でも、なんだか温かかった。
「そんなところで風邪引くぞ」
泣いてる女の子にかけるとは思えないほどぶっきらぼうな口調。振り向くと、にじんだ景色の中にずっと探していた人がいた。私のことを見てしみじみと呟く。
「やっぱり俺がいないとダメなんだな…」
その刹那、少年の頬がいい音を立てて鳴る。頬に真っ赤な手の跡がついた。
私じゃないからユアさんだ。いつもにこにこ笑ってるユアさんが目を吊り上げて怒っていた。
「グミさんのこと置いて、どこ行ってたんですか! …こんなに、こんなに心配させて」
そこまで言って、ユアさんの怒った声が途切れる。大きなトパーズの瞳から、大粒の涙がぽろぽろとこぼれ落ちる。
ぶたれた男の人は、ほっぺたを押さえながら言った。
「…ちょっと調べ事してたんだ。昔の先生に今朝のこと説明したら、いきなりめちゃくちゃに怒られた。言われたほうの気持ちも考えろってな。だから…その、 さっきはごめん」
ユアさんは黙って聞いてるけど…私は涙が止まらなかった。
シュウは私の顔を覗き込んで言った。
「そ、そんなに泣くなよ。この通りだから…ごめん!」
シュウは泣きじゃくる私にもう一度頭を下げる。すぐにでも私が悪かったと謝りたかったけど、胸が苦しくて言えなかった。何とか最初に思いついたことを口に する。
「…あんなこと言っちゃったから、もう帰ってきてくれないかと思った」
「………」
シュウは黙ったまま私の顔を見ていた。
私は顔を伏せて呟く。
「ごめん…なさい」
シュウは冷たくなった私の手を握って、言った。
「……俺なら全然気にしてないよ。冷えるから…帰ろう」
「うん…」
シュウの手はどんな手袋よりもあったかくて……
凍り付いてた私の心の氷まで溶かしてしまうほど暖かかった。
*
「すげえ! この家、誰の家だよ」
これがシュウの第一声だったが、グミもユアもシュウが戻ってきてくれたということだけで、大満足のようだった。料理は多少冷めてしまったが、鍵も閉めない でいったシュウの家が荒らされていないのは奇跡にも等しかった。ユアは冷めてしまったなべを火にかけなおし、グミは大きく手を広げて、自分のやった大仕事 のことを説明し始めた。
「私が飾り付けして、ユアさんが料理を用意してくれたの」
「わたしが作ったのはこのスープだけですけどね」
さっきまで死にそうな顔をしてたとは思えないほどグミは幸せそうな顔をしていた。
シュウはある程度クリスマスの飾りを見てから、ユアのかき混ぜているスープを覗き込む。
「うわ、なんだこの赤さは…でも、とにかくすげえ!! これが、クリスマスか」
とにかく、異常なまでにシュウがはしゃいでる。まぁもともと異常なやつではあったが、初めてのクリスマスに興奮してるのだろう。
ユアが冷めてしまった料理をオーブンに入れて温める。あぁ…サラダまで入れてしまったが、まぁ大丈夫だろう。食べるのは我ではないし、いいか。
グミがシュウの手を引いて、テーブルまで行った。最初にグミが定位置に腰掛け、言った。
「冷めちゃうから、早くご飯にしよっ」
既に両手にフォークとナイフを握っている。時間も時間だし、腹が減ってるのだろう。
料理をあっためなおしていたユアもおなかを押さえて答える。
「料理もあったまりましたし、そうしましょう。わたしもぺこぺこです」
ユアはかなり熱いはずの料理を両手で持ってきて、テーブルに置いた。
今にも食べだしそうなグミを左手で抑えて、シュウが立ち上がる。
「待った。その前に聞いて欲しいことがあるんだ」
「なに?」
シュウはグミの疑問には答えず、ポケットから小さな木製の箱を取り出した。
「俺、先生にもサンタなんて実在しないだろって言ったんだ。そしたら…『サンタがいるとかいないじゃない。クリスマスは元来、もらう日じゃなくて送る日な んだ。お前がその 子のためにサンタになってやれ』って言われたんだ。だから、これ」
シュウがグミに木の箱を渡す。グミが木の箱を開けるよ、小さな銀のリングがあった。
全然予想してなかったグミは目をまん丸にして、言った。
「これ…私に?」
シュウはグミの質問に頭をかきながら答える。
「時間なくて宝石までは手に入らなかったけど、見よう見まねで作った。サイズ聞いてなかったから勘で作ったけど…」
グミがリングを薬指の通すと、ちょうどいいところで収まった。
「ぴったり…! なんだかまるで…あっ」
グミはあることに気づいて、頬を紅潮させる。シュウは恥ずかしいのをごまかすためにか、ポケットに手を突っ込んでもうひとつ木箱を取り出した。
それをユアの前に置く。
「ユアにも作ったんだ。はい」
箱の中にはグミと同じような銀のリング。だが、気持ちグミのものよりサイズが大きかった。ユアもグミのように薬指に通すが、いくらやっても、ほんの少し大 きかった。
ユアは嬉しそうに、
「わたし、誰かからこんなに優しくしてもらったの…初めてです。ちょっと大きいですけど、大切にします」
と言って、微笑む。
シュウはユアが喜んでるのを確認すると、今度は懐に手を突っ込んで言った。
「レフェルにもあるぞ…」
なに…人間でもないのに、プレゼントとは油断した。残念ながら我にはリングをはめる指がない。
「な、我にもあるのか? 指輪なら…」
我がそこまで言いかけて、シュウが遮る。
「いや、お前にはこれだ」
シュウが内ポケットから取り出したのは木箱ではなく、何かの小道具のような布切れだった。赤くて小さい帽子と綿で作ったヒゲを動けない我に無理やりつけ る。
「レフェルなにそれ…おっかしー」
グミが指差して笑う。ユアは両手で口を押さえているが、笑いをこらえてるのはすぐにわかった。
シュウめ…覚えてろ。
シュウは我をサンタに仕立て上げて満足したらしく、壊れかけの椅子に腰掛けて言った。
「待たせたな、じゃあ飯にしようか」
リングをして赤くなったグミは、小さな声でシュウに言った。
「シュウ、私…シュウを探すので精一杯でプレゼントのこと…」
シュウはグミが謝ろうとするのをやめるように手で合図する。
それから早口で言った。
「朝、サンタはいないって言ったけど…一足先にプレゼントもらってたみたいなんだ。せっかちなサンタだよな」
グミにもユアにもクエスションマークが出ているが、シュウの様子をみるとすぐに答えがわかった。さっきの…いや現在進行形だが、この仕打ちの仕返しに、
「なにをもらったんだ?」
と返す。シュウは恥ずかしそうに言った。
「目が覚めたら枕元に転がってたよ。なにかは…教えない」
ぐ〜と腹の音が聞こえる。シュウは話を逸らそうと、コップを持って言った。
「じゃあ飯にしよう! 乾杯だ」
シュウの合図にグミとユアもコップを持ち上げる。
「かんぱーい」
結局飲めや唄えの大騒ぎになった。シュウは酒被るし、グミはブランデー入りのチョコで酔うし、ユアは鳥の血合いの部分を食って狼光臨させるしと…怪我人こ そ出 ないものの、すさまじいクリスマスパーティーとなった。
なお、我はサンタの格好をさせられたまま、ぼろいテーブルの上に転がされている。
そうだ、眠ってしまった三人の代わりに言っておこう。

「メリークリスマス」




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